美術

信仰とともにあり続ける茶碗。

曜変天目2碗目

No. 891(2019.04.15発行)
曜変天目 宇宙でござる!?
「茶碗が宝なのではない」。龍光院住職の小堀月浦さんは繰り返しそう語る。 では美にどんな意味があり、宝とは何を意味するのか。茶碗を通じて導かれる先にあるものとは。

大徳寺龍光院所蔵曜変天目(京都)

3碗の中で、目にする機会の最も稀な作。堺というより当時の日本随一の豪商にして茶人でもあった、天王寺屋の津田宗及が所持し、宗及の父の菩提寺であった堺の大通庵から、宗及の次男、江月宗玩和尚が二世住持となった龍光院へもたらされた。以後、寺院の什物であり喫茶の器という、天目茶碗本来のあり方を失うことなく、400年にわたって龍光院に秘蔵されてきた。そして本作もまた、天王寺屋以前の来歴を辿ることができない。
 
他の2碗とほぼ同寸だが、高台畳付の幅がやや細く繊細な印象。碗の内側には銀色から黄白色を帯びた斑文が浮かび、その周囲に青、紫、緑、黄の光彩が生じている。また外面にもほのかに光彩が見て取れる。曜変天目の中では最も静かな、侘びた、と言われる佇まい。だが「地味ということではなく、龍光院さんのものが一番という方がいるのもわかる。それぞれの個性で最大限の完成度に達している」(大阪市立東洋陶磁美術館学芸課長代理・小林仁さん)、「手の内で回すと、瞬く間にさまざまな色が浮かび上がる」(同館館長・出川哲朗さん)。そして龍光院住職、小堀月浦さんの願いは、「茶碗の背後にある仏の教え、寺の姿をぜひ見ていただきたい」。

近代まで龍光院は住職1人ではなく、輪番制で同格の3人を寺の責任者としたことで、什物を守れたのでは、と小堀さん。高6.5×口径12.1×高台径3.7㎝、南宋 時代、国宝。

撮影

渞 忠之

text/
Mari Hashimoto

本記事は雑誌BRUTUS891号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は891号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

No.891
曜変天目 宇宙でござる!?(2019.04.15発行)

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