エンターテインメント

コントだけじゃない、やっぱり小林賢太郎が面白い。

BRUTUSCOPE

No. 890(2019.04.01発行)
花と花束。
『こばなしけんたろう』

ホントかウソかなんてどうでもよくなる、新刊『こばなしけんたろう』について。

小林賢太郎といえば、ラーメンズの、あのシュールな独特のコントを真っ先に思い浮かべるかもしれない。2016年には自身率いるコント集団〈カジャラ〉を立ち上げ、現在4回目となる公演『怪獣たちの宴』が全国を絶賛巡演中だ。とにかく笑える2時間が過ごせるのでぜひ足を運んでみてほしいのだが、会場では上演台本が販売されているのも面白い。その前書きには、「コントや演劇のトレーニング器具として活かしていただければ嬉しく思う」という彼の言葉がある。実はコントの脚本は世の中に出回ることが極めて少ないらしい。それを出版するということだけでも、次世代の“コントマン”の育成に一役買っているということだろう。さらに、美大卒ということもあり絵もうまいとくる。16年刊行の『うるうのもり』は、森に棲むオバケと少年を描いた、くすりと笑える美しい絵本で、ちょっと惚れ惚れしてしまう。
 
そんな小林にとって、書くことは創作の一つだ。去る2月に発売された短編集『こばなしけんたろう』には、その名の通り小噺が23編収められているのだが、架空の国「カジャルラ王国」を旅する女優の記事が旅雑誌さながらに書かれていたり、20年前の自分との往復書簡だったり、推理小説のようなスリルが味わえる探偵事件簿だったりする。どれも小林節炸裂の世界観でおよそ捉えどころがなく、肩透かしを食らうようで、それでいて爽やか。その小気味よい余韻には、彼の奥深いコントに通底するものを感じる。
 
バカみたいなことを本気でやって笑った、子供の頃の純粋な心はどこに行った? 小林の本を読むと、そう自分に問いたくなる。そして「この兄ちゃん、すげーな」と、思うのだ。

『コントマンシップ カジャラ #1「大人たるもの」上演台本』

小林が作・演出を手がけるコント集団〈カジャラ〉の第1回公演の上演台本。上演時間や登場人物、場面設定なども細かに記され、コントを演じる者にとってはもちろん、読み物としても面白い。劇場限定販売作品。#1〜3が発売中。

『うるうのもり』

4年に1度しか年を取らないという、森に棲む孤独なオバケと少年の交流を描いた絵本。人物、動物、植物など様々なものが登場し、小林の画力を存分に味わえるのも魅力だ。インパクトある表紙も目を引く。2016年刊/講談社/1,600円。

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『こばなしけんたろう』

2016〜18年の『小説幻冬』に連載された短編を再構成。ダジャレを効かせた「短いこばなし三十三本」や、生物学者が書いたとする「新生物カジャラの歴史と生態」など23編を収録。フィクションとノンフィクションが入り混じる多彩な小林ワールドが堪能できる。19年2月刊/幻冬舎/1,400円。

小林賢太郎

こばやし・けんたろう/1973年生まれ。多摩美術大学卒業後、98年にコントグループ〈ラーメンズ〉としてデビュー。脚本家演出家、パフォーマーとして舞台や映像作品を多数発表。著書に、マンガ『鼻兎』(講談社)、『僕がコントや演劇のために考えていること』(幻冬舎)などがある。

text/
Shiho Nakamura

本記事は雑誌BRUTUS890号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は890号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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花と花束。(2019.04.01発行)

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