生活・スポーツ

東京花市場。

花と花束。

No. 890(2019.04.01発行)
花と花束。
早朝4時。花卉仲卸の店先にまで花が溢れた〈大田市場花き部〉のいつもの風景。良質の生花を目がけてフローリストたちがひしめき合う。

計2万種以上、年間5億本を超える国内外の生花が流通する、アジア最大級のフラワーマーケット『大田市場花き部』。定番はもちろん、新品種が次々に運び込まれ、彩りのある春がギュッと凝縮された場所。そこに並ぶ切り花で作った、今が旬な2019年版の花図鑑。

チューリップ(アプリコットパロット)

気温(または室温)上昇によって、開花運動する代表的な花。約17〜25℃になると開き始め、16℃を下ると閉じるとされる。一日の中で変化する表情に加え、一重咲き、華やかな八重咲き、花びらがねじれて波打つパロット咲きと品種も豊富で、さまざまな花姿が楽しめる。

ラナンキュラス(ポムロール)

2000年頃までは、約4〜5㎝と小ぶりで脇役に甘んじていたが、品種改良が進み、約8〜10㎝級が主流になった現在は花束には欠かせない人気品目。薄い花びらが何重にも重なり、ふっくらと大輪を咲かせる姿は“まるでバラのように華やかで美しい”と評される。

ミモザ

桜より一足先に春の訪れを告げる花として日本では一般的だが、イタリアでは、「国際女性デー」に制定された3月8日に、男性が日頃の感謝を込めて女性にミモザを贈ることが習慣になっている。香りが良く、少しビターで淡い甘さがあることから、フレグランスに用いられることも。

フリージア(スピーディスノー)

茎は真っすぐに太陽に向かって伸び、小さいながらもパッチリとした花を咲かす。花言葉は色ごとに異なり、白は“あどけなさ”、黄色は“無邪気”、赤は“純潔”、総称して“天真爛漫”とされる。どこを切り取っても少女のような初々しさを感じさせるのが、この花の面白いところ。

ダリア(祝花)

古くは、ヨーロッパで1株がダイヤモンド1粒と等価交換されることがあったほど高値で取引されていた。現在、ウエディングの装飾花として人気を集めるのも納得だ。最大で花径30㎝以上のものが流通し、ボール咲きといわれる鞠のような品種が登場するなど、市場でも異彩を放つ。

アジサイ(ハイドラホワイト)

ツバキ、桜に並ぶ、日本を代表する和花の一つ。花業界で最大の褒め言葉である“バラのよう”とフランスでは称され、海外でも人気。“hydro(水)”と“angeion(容器)”からなる、学名の“hydrangea”は、大量の水を吸い蒸発させる梅雨の花らしい性質を表している。

セリンセ

野花ブームが到来した花業界。市場での取扱数が増えてきたというのがセリンセ。春に蒔いた種が発芽し、すぐに筒状の花を咲かせ、秋から冬に枯れていく短命な一年草。下向きに咲いた花を守るように葉が重なったさまがエビの尾に見えることから“青エビ”と呼ばれることも。

ガーベラ(キューピッド、プラック、ジェイジェイ)

キク科に分類されるガーベラ。和名は花車。日本には大正初期に渡来し、丸い一輪の花の真ん中にはっきりと花芯がある車輪のような姿から名づけられた。現在、切り花として500種以上が流通しているとされ、一年を通して出荷があるため旬を見失いがちだが、本来4月が最盛期。

アリウム(踊る丹頂)

一見、大きな実のようだが、近づくと無数の小花が集まって球体になっていることがわかる。大自然で育ったようなクネクネと曲がった形状もかなり個性的だが、その茎の動きは、実はワイヤーなどで意図的につけたもの。生産者ごとに、その動きにも個性が出るとか。

菊(クラシックココア)

オーストラリアでは、学名のchrysanthemumを短縮した“mum”として親しまれ、その発音が“mom(母)”と似ていることから母の日に贈る花として馴染みがある。仏花として根づいた日本では、そのイメージを払拭するために“〜マム”という品種名でも流通する。

ストレリチア

くちばしに見える緑色の苞に、鶏冠を模したようなオレンジ色の花。姿や形は、まるで南国に生息する鳥類のよう。その見た目から、和名では“極楽鳥花”と呼ばれている。受粉するための粘液がつぼみや花から分泌される、まさに南アフリカ原産らしい珍奇花。

パンジー(ミュール)

下を向いた花の姿が物思いにふける人のように見えることから、フランス語の“pensée(思考)”にちなんで名づけられた。古くは、食すと強心作用があるとされ、シェイクスピア作品では、惚れ薬としても登場。花言葉は“私を思って”など、恋に関連する異称も多い。

カラー(ウエディングマーチ)

実は、花芯に見える黄色の棒状のものが花。ユリのように白いラッパ状の苞に包まれている姿からイギリスでは“トランペット・リリー”という愛称で親しまれる。上品な佇まいでスレンダーなドレスに合わせやすいという理由で、ウエディングを連想させる品種名も多い。

マーガレット(デイジークリームピンク)

キク科ならではの丈夫な性質を持つ、マーガレット。見ごろが過ぎても花びらが散りにくいことから、“落ちない花”の代表として受験生の応援花となっている。“真実の愛”“恋を占う”という花言葉から、花占いの定番の品目にも挙げられる。カナリア諸島原産。

スカビオサ(モコパープル、グラマラスワイン、ナナソフトピンク)

花言葉は“叶わぬ恋”。アメリカではmorning bride(朝の花嫁)としていいイメージで流通しているが、元来は“mourning bride(喪中の花嫁)”。育種が盛んな品目のため、さまざまなグラデーションカラーが栽培されているものの、その鮮やかさとは裏腹にどこか儚さを含んでいる。

ギリア(カピタータ)

切り花としては、球状に青い小花が集まって咲く“カピタータ”が一般的だが、一重の小さな花をつける“トリコロール”の2種がある。どちらも、花茎が長く伸びて柔らかい印象になる形状はほぼ同じ。水揚げは良く花持ちするが、茎が折れやすいので扱いには注意。北アメリカ原産。

ワックスフラワー(レベレーション)

南半球に見られる、色や形状が個性的な“ネイティブフラワー”のなかではガーリーな印象のある一種。花びらに光沢があり、咲いた姿が蝋(ワックス)細工のように見えるため、この名がつけられた。葉や茎からレモンのような柑橘系の甘い香りがするのも特徴。オーストラリア原産。

カーネーション(ゴーレム、ファリダ)

母の日に贈る花としてお馴染みだが、その歴史は古く、2000年前のギリシャでは、神に手向ける献花として愛された。また、17世紀には、熱病を和らげる薬草や食用としても親しまれた世界的に最もポピュラーな花。それもあってか、花業界では異例の900〜1,000種が流通する。

ミツマタ

3つに分枝する性質が名前の由来。枝の先に小さく集まって半球体を作り、うつむくように下を向いて咲く。その芳香は、自然界では鳥たちにも人気。強い繊維質の樹皮は、強度の高い良質の紙の原料として有名で、紙幣などにも多く用いられる。中国中南部やヒマラヤ地方原産。

新鮮できれいな花ばかり。 さぁ〜、買った、買った!

『大田市場花き部』で主に切り花が流通するのが、月曜・水曜・金曜の週3日。いずれも、日の出前から賑わい始め、競りが開かれる朝7時にピークを迎える。2つある競り場のうち、市場で切り花の7割の流通量を誇る〈大田花き〉を訪問。ビニールや段ボールに包装された、いつもとは少し様子が違う花の姿。大きな声を上げる競り人の合図とともに、数秒のうちに、約100本単位のケースが次々に買い落とされ、出荷される。今、私たちの部屋に飾られた花も、ここから届けられたものかも……。

写真

長島有里枝

edit&text/
Keiichiro Miyata
special thanks/
Ota Floriculture Research Institute Ltd.

本記事は雑誌BRUTUS890号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は890号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.890
花と花束。(2019.04.01発行)

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