ライフスタイル

散歩中に見つけた花と自作の花瓶。| 坂口恭平

私の好きな花。

No. 890(2019.04.01発行)
花と花束。
「プロでは絶対作れない、いや作らない」という、極厚ガラスと歪んだ球体が愛嬌のある2つの自作花瓶に、恐るべき“解像度”の目で見つけた草花を挿して。まさしく無手勝流の坂口恭平式生け花の世界が完成。

「自分で作った花瓶に、銀座の花を生けるよ」と、本誌編集部のある銀座周辺に咲く花を使うという、驚くべき提案をしてくれた坂口さん、「銀座の花」とはこれいかに。取材当日、半信半疑の取材班の前に「ほら、あったでしょ」と携えてきたのは、何と「野イチゴ」と「ジンチョウゲ」。まさか銀座の片隅に、イチゴが実をつけているとは。

「少し歩いたらすぐ、道路脇にひっそり咲いていたのを見つけたよ。気分が良くなると、いつもより景色がよく見えてくる。だから花を摘みたくなるんだよね」
 
普段から散歩中に草木を採取して生けたり、押し花にしてノートに貼り付け、品種や特徴などを調べて書き込んだ「草花帖」も作っている。花を挿すのは、自作のガラスと陶器のユニークな花瓶。いずれも「ずぶの素人」ながら、それぞれ友人であるガラス作家の石川昌浩さん、陶芸家石井隆寛さんの工房を訪ねて、作らせてもらったものだとか。

「この形、よくない? 左の陶器は、新聞紙を丸めてその上から手びねりで包んだだけ。多くの人が技術がないとものが作れないと思い込んでいるけど、そんなことはない。僕は食べ物から着るものまで、欲しいものはみんな自分で作ってる。花も花器も、必ずしも店で買わなくてもいいはずなんだ。哲学者のジル・ドゥルーズは“権力とは、人々に『できない』と思わせるもの”だと言ってるけど、まったくその通り。僕は一つのレジスタンスとして花を生けてるんだよね」

ライフスタイルカテゴリの記事をもっと読む

さかぐち・きょうへい

1978年生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。作家、建築家、音楽家、画家。2016年『家族の哲学』で第57回熊日文学賞受賞。

photo/
Keisuke Fukamizu
text/
Kosuke Ide

本記事は雑誌BRUTUS890号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は890号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.890
花と花束。(2019.04.01発行)

関連記事