ハゲとウィッグ。

男の色気

No. 889(2019.03.15発行)
服があるのに、着たいものがない?

 新年会で家族写真を撮影しようという時に、祖母の頭頂部のアミアミに気づいた。妹に話すと、「おばあちゃん、オシャレして来てたね」との反応。女性のカツラは男性のカツラとは違い"ウィッグ"という名の、ハレの日のオシャレアイテムとして認められていることに気づいた。そこには、男性用カツラに対する"決してバレてはいけないもの"というネガティブさは微塵も感じられない。百貨店などでも、店内で堂々とウィッグの受注をしている。女性はウィッグを着けるにあたり、男性と比べて美意識が高く、似合う髪形を探して楽しんでいるようだ。美容院に行き、地毛の色や長さをウィッグと馴染むように合わせたりもしている。男性の、ただただ薄毛を隠そうとする態度とはまるきり違うのだ。なぜ、女性のウィッグはオシャレアイテムとして周囲から認知されているのに、男がつけるヅラは嘲笑の対象となり、どこか後ろめたい存在になってしまうのだろうか? 同じ薄毛なのに、どうも男女間でのヅラとウィッグの世間の捉え方には、明らかな差別がある。俺はこの不平等にかすかな憤りを感じる。今年は選挙の年らしい。男女薄毛均等法とか、ヅラヘイト禁止法を唱える候補者が現れることを切に願う。俺の清き一票は、あなたのものだ。

やぐち・けんいち

1975年生まれ。ヘア&メイク兼ハゲ探求家元。2015年に帽子を脱ぎ捨てる。弊誌ほか多数の媒体で活躍。美容室〈駿河台矢口〉店主。

文/
矢口憲一

本記事は雑誌BRUTUS889号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は889号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.889
服があるのに、着たいものがない?(2019.03.15発行)

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