ファッション

メルカリが変えた “モノを所有する概念”

号外ブルータス繊維新聞

No. 889(2019.03.15発行)
服があるのに、着たいものがない?

人から人へ受け継がれる時代に

メルカリは「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」ことを目的に、2013年に創業した。フリマサイトではヤフオクやモバオクが先行していたが、スマートフォン経由のフリマアプリというビジネスモデルを選択。売買にまつわる煩雑な作業を簡略化し、気軽に出品・購入できるようにした。当初は20〜30代の女性が中心だったが、その使いやすさが知れ渡るにつれ、40〜50代の男性やシニア世代も参入。裾野が飛躍的に広がりつつある。
 
今回、話を聞いたのは、日本のメルカリ事業を統括する田面木宏尚さん。80足のスニーカーを所有する靴オタで、「暇さえあればメルカリを覗いていて、週1回はスニーカーを売買している」という。メルカリの責任者は、メルカリのヘビーユーザーでもあるのだ。
 
メルカリの普及によって、最も変化したのは、若い世代の“モノを所有する概念”だろう。これまで洋服や靴は消費者個人で再販しても、一部のプレミアものを除けば、買った瞬間に大きく価値が下がることがほとんどだった。でも(メルカリという“売買ツール”を手に入れた)今は違う。田面木さんは「ミレニアル世代はショッパーやタグを捨てない。次の人に引き継いでもらうことを前提に、完全な状態でモノを所有するようになってきている」と指摘する。さらに「モノがバトンのように人から人へ受け継がれるようになり、洋服にも所有から一時的な所有、あるいはシェアに近い概念が広がってきている」と続ける。
 
こうした若い世代へのメルカリの普及は、無意識のうちに「モノを捨てない」というサステイナブルな意識につながっている。自分にとって不要なものでも、他人にとっては価値があることを現代の若者は知っているのだ。「メルカリはそういう社会の取引を滑らかにしていくという使命を持っている」と田面木さんは強調する。
 
法人相手の取引も徐々に広がってきている。メルカリはCtoC(個人間取引)のマーケットプレイスだが、ライブコマース機能の「メルカリチャンネル」は、一部を法人向けに開放。アパレルの在庫廃棄が問題になっていることから、ブランド側から処分の相談を受けることもあるという。田面木さんは「メルカリチャンネルは、いわばメルカリ版のTV(アプリ)ショッピング。将来的には、ブランドの在庫を販売するのに最適なマーケットプレイスになる可能性を秘めている」と自信を見せる。興味津々のメーカーも多いのではないだろうか。
 
最近は、当初は想定していなかったシニア層の利用が増えてきている。それを受けて始めたのが、メルカリの利用の仕方を60歳以上の参加者同士で披露し合う「メルカリシニア座談会」。趣味が共通しているということで、サロンや売買をキッカケに交流が始まることもあるそうだ。
 
下の表にあるように、60代以上の世代はかくれ資産(家庭に眠る不要品)が豊富だし、生前に不要なモノを整理しておきたいという需要もある。メルカリ=若者の図式は、今や過去のものになりつつあるのだ。
 
戦後、日本人はモノを所有することで豊かさを実感してきた。メルカリの台頭は、そんなステレオタイプな日本人の価値観が変わりつつあることの証左なのかもしれない。

あなたの家に資産が隠れています。

性・年代別かくれ資産平均値

メルカリは昨年11月、〈みんなのかくれ資産調査委員会〉による調査結果を発表した。かくれ資産とは「日本の家庭に眠る不要品」のことで、日本のかくれ資産の総額は約37兆円に上ることがわかった。国家予算の約3分の1に匹敵する金額(!)なのだ。男女世代別で最もかくれ資産が多いのは、60代以上の女性(約50万円)という結果に。

売り買いともにユニクロ1位はちょっと意外?

取引ブランドランキング 2018

メルカリで最も売買されているブランドは、1〜4位が同じ。ユニクロ、ナイキアディダス、アップルの順番だ。ユニクロは多くの人が持っているブランドで、リユースでは値段がつかないと思われがちだが、持っている人が多いがゆえに需要も高いのだ。大人気のナイキ THE TENのエアジョーダンⅠは、市場価格の10倍以上の価格で取引されている。

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編集/
増田海治郎

本記事は雑誌BRUTUS889号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は889号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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服があるのに、着たいものがない?(2019.03.15発行)

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