ファッション

服の履歴書

STYLEBOOK 2019 S/S

No. 889(2019.03.15発行)
服があるのに、着たいものがない?
ハット69,000円、ナイロンブルゾン197,000円、タートルネックニット90,000円(以上プラダ/プラダ クライアントサービス☎0120・45・1913)

価値ある服って何だろう? 素材へのマニアックな探究心が生み出したレザージャケット、約200年作り方を変えないコート。それぞれのデザイナーや職人がこだわる服作りの背景を知れば、その答えが見えてきます。

Prada

ハット69,000円、タートルネックニット129,000円*すべて予定価格(共にプラダ/プラダ クライアントサービス)

60年代のオリンピック選手が着ていそうなクラシックでスポーティなニットやブルゾン。グラフィカルなロゴやトロンプルイユ(だまし絵)ポケットは、高度なニッティング技術で表現したという。ルックにたびたび登場するパディング入りのハットは、ブランドのアイコンといえるブラックナイロン素材を使用。ミウッチャ・プラダが仕掛けるクリエイションを、パズル感覚でミックスしたかのようなスタイルだ。

Balenciaga

ジャケット289,000円、カットソー55,000円*参考価格、デニムパンツ70,000円*参考色、シューズ135,000円(以上バレンシアガ/バレンシアガ ジャパン☎0570・000・601)

常に新しい“肩”のシルエットが、モードの最前線で風を切って歩き続ける。今季デムナ・ヴァザリアが挑戦したのは「テーラリングやクチュールを現代の人々の装いに適した方法で組み替えること」。スクエアエッジを利かせたショルダーラインが印象的なジャケットは、背面に向かって厚みが増す肩パッドで綿密にシルエットを形作った。ボトムに色落ちしたスリムデニムを合わせたコーディネートもらしさが表れている。

Burberry

シャツ125,000円、メッシュのカットソー64,000円、中に着たTシャツ52,000円、パンツ78,000円*すべて予定価格(以上バーバリー/バーバリー ジャパン☎0066・33・812819)

モード×ストリートの立役者、リカルド・ティッシが就任して初のシーズン。イタリア人デザイナーを迎え入れ、彼が愛するバンビやパンクをはじめとする英国へのオマージュが詰まったコレクションになった。テーマは「キングダム」。鹿柄シャツのフロントには“Why did they kill Bambi?”と、セックス・ピストルズの曲名を連想させる一文にも彼らしいメッセージが。そこに、メッシュのカットソーを重ねた。

Rick Owens

レザージャケット446,000円(リック・オウエンス/イーストランド☎03・6712・6777)

モノトーンで構築的なデザインに加え、常に最上級の素材に対する強いこだわりを見せるのが、リック・オウエンスの服作り。スニーカーと並ぶ定番アイテムであるレザージャケットが今季はかなり個性的だ。シーズンテーマは「バベルの塔」。未完成で儚いさまを表現するのに驚くほど透明感のあるレザーを使用した。これは肉厚なカーフレザーをグリセリンを使って鞣すことにより生まれたもの。極端な短丈は健在だ。服作りへのマニアックな探究心はとどまるところを知らない。

sacai

ジャケット110,000円、ショートパンツ43,000円、ブーツ89, 000円(以上サカイ☎03・6418・5977)、ヴィンテージのシャ ツ2,800円(メチャ☎03・5929・8993)

セオリーを壊しながら、新しい価値観を提案するサカイのデザインはオリジナリティの高い自由なフォルムを作り出してきた。クラシックなグレンチェックのジャケットと、着古したようなデニムジャケット。パターンが異なる2つのアイテムを組み合わせた、ハイブリッドなデザインはまさに真骨頂。フロントと後ろ姿、ふとした体の動きなどで様々に服の印象が変わり、袖を通すたびに360度の発見を楽しめる。

Dior

ジャケット500,000円、パンツ250,000円、ネックレス230,000円、シューズ110,000円(以上ディオール/クリスチャン ディオール☎0120・02・1947)

クチュールメゾンに移ったキム・ジョーンズは、間違いなくお針子さんたちの手仕事に刺激を受けたのだろう。ムッシュ ディオールが1950年秋冬オートクチュール(もちろんウィメンズコレクション)で発表したアーカイブにインスパイアされ、着物合わせのセットアップを生み出した。柔らかなカシミヤがエレガントなドレープを描く。スニーカーと、YOONのデザインしたアクセサリーを合わせるのが、いかにもキムらしい。

Celine

レザートラウザー550,000円、タートルネックニット105,000円、ベルト68,000円、ブレスレット110,000円、シューズ11 5,000円*すべて予定価格(以上セリーヌ バイ エディ・スリマン/セリーヌ ジャパン☎03・5414・1401)

70年代後半のフランスベルギーに起こった音楽ムーブメント「コールドウェーブ」を2019 S/Sのインスピレーション源に掲げた新生セリーヌ。代表アイテムの一つがレザートラウザーズだ。エディが心から惚れ込んだであろう上質なシープレザーを、歴史あるメゾンのクラフトワークで仕上げた。2プリーツが生み出す腰回りのシルエットが美しい。実はジャケットなどもアーム回りに余裕が生まれたと、早くも評判だ。

Saint Laurent

スパンコールジャケット2,100,000円、デニムシャツ90,000円、中に着たTシャツ40,000円、デニムパンツ85,000円、ベルト49,000円*参考価格(以上サンローラン バイ アンソニー・ヴァカレロ/イヴ・サンローラン☎0570・016655)

インドのムンバイに独自のアトリエを持ち、伝統的な手刺繍を駆使したアイテムを発表するサンローラン。高い技術を持つインドの職人たちのクラフツマンシップと労働環境を守り、後世に伝えていくための取り組みに力を入れてきた。クチュールを再解釈して生まれたこのジャケットは、メタリックの糸、ガラスビーズ、ストーンを一つ一つ手刺繍しており、制作するのになんと800時間を要する。アートピースのように特別なアイテムだ。デニムとラフに合わせるのもサンローランらしい着こなし。

Valentino

中に着たナイロンパーカ160,000円*参考価格、シャツ150, 000円(共にヴァレンティノ/ヴァレンティノ インフォメーションデスク☎03・6384・3512)

ローマスペイン広場にアトリエを構える伝統のクチュールメゾン。メンズでもその技を披露することがあるが、コレクションはストリートを強く意識している。2017 S/Sから単独デザイナーとなったピエールパオロ・ピッチョーリは、60〜70年代のVロゴをブートレグ的に解釈したオプティカルプリントをキールックの一つに。オーバーフィッティングのハワイアン柄シルクパジャマシャツと、絶妙なミクスチャーを表現。

Mackintosh

コート166,000円(マッキントッシュ/マッキントッシュ  青山店☎03・6418・5711)

シグネチャーのゴム引きコートは、約200年変わらない手法でいまだに一点ずつハンドメイドされているから驚きだ。スコットランドの職人が、人差し指につけたノリを丁寧に伸ばし、止水テープをローラーで圧着。この伝統的なシーリング技術の美しさを、あえてインサイドアウトでデザインに落とし込んだ。ベースはオーセンティックなステンカラーコート。張りのあるシンプルなシルエットはそのままに、モダンに仕上げた。

visvim

サンダル78,000円、デニムパンツ100,000円、ソックス20,000円(以上ビズビム/F.I.L. TOKYO☎03・5725・9568)

デザイナー中村ヒロキが世界中で見てきた“後世に残したいクラフト”をプロダクトに落とし込む手法が世界で評価されている。2001年ローンチ以来、アップデートを重ねるサンダル「クリスト」は、美術家クリスト&ジャンヌ=クロードの作品にインスパイアされ、足を“包み込む”デザインに。今季のアッパーは、リネンのムラ糸に天然藍を枷染めしたチェックや、コチニール染料を使用したドット柄を使用。パイピングには中国南西部の少数民族BUYI族が手織りで仕上げた天然草木染め生地を採用した。

kolor

右/中に着たモックネックのTシャツ20,000円、ソックス4,200円、サンダル46,000円、その他はすべてトワル(以上カラー☎03・6427・6226) 左/レイヤードブルゾン224,000円、中に着たTシャツ16,000円、パンツ120,000円、ソックス4,200円、サンダル46,000円(以上カラー)

右は縫製工場向けにアトリエのパタンナーが縫い上げたトワル(見本)で、左はそれをもとに工場が作った完成品。デザイナー阿部潤一が実際に着てシルエット、ディテールを確認しているので、トワルのサイズは1と小さめ。出来上がりを精度高くイメージするために、約77ものパーツからなる付属品や生地は、製品に近いものにこだわる。その分工場の苦労もよくわかるし、トワルのクオリティが高ければ、製品の仕上がりも良くなるというメリットがあるという。並べるとデザイナーの考えが見えてきそうだ。

7 Moncler Fragment Hiroshi Fujiwara

ナイロンジャケット189,000円、中に着たTシャツ47,000円(共に7 モンクレール フラグメント ヒロシ・フジワラ/モンクレール ジャパン☎03・3486・2110)、中に着たイエローのパーカ14,800円(メチャ☎03・5929・8993)、ヴィンテージのパンツ11,000円(ジェラルド☎03・6323・5451)

藤原ヒロシが手がけるM−65ジャケットをベースにした一着。〈フラグメント〉を象徴するグラフィカルなコードストリングや、ロゴテープが特徴で、春スキーにも対応可能な撥水透湿フィルムを内側に搭載し、非常に薄く軽量なレインジャケットに仕上がっている。ブランドとしては、ほかにもクレイグ・グリーン、シモーン・ロシャなどを迎え、全く異なる表現を模索。カルチャーも味方につけ、次のフェーズへと羽ばたく。

photo/
Mitsuo Okamoto
styling/
Michio Hayashi
edit&text/
Chizuru Oba

本記事は雑誌BRUTUS889号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は889号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.889
服があるのに、着たいものがない?(2019.03.15発行)

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