とんかつ七井戸/ブンカ堂

グルマン温故知新

No. 888(2019.03.01発行)
WE LOVE 平成アニメ

いい酒があるとんかつ屋と、豚肉つまみ充実の居酒屋と。

人気の焼き鳥店がオープンしたとんかつ屋は、酒のセレクトにもツボをつかれる「飲みたくなる店」。一方、飲ん兵衛タウン立石に誕生した大衆酒場の新星は、ショウガ焼きに豚タン、ほかにも気になる豚肉つまみいろいろ。あちらこちらで、つい「豚で飲む」ことに。

とんかつ七井戸(外苑前)

焼き鳥の名手が考える、“とんかつの正解”。

大のとんかつ好きを自称する〈焼鳥今井〉の今井充史さん。とんかつの話となれば、好きな店、通った店から、自分で揚げたエピソードまで出てくる、出てくる。で、とうとう店を始めてしまった。とんかつは、衣はからっと、豚肉は軟らかく、ジューシーでないと。味の着地点から逆算し、揚げ油は保湿性の高いラードで、火入れは低めの温度でじっくり。単なる好物を超え、真剣にとんかつを科学してきた今井さんの「正解」を、洋食、とんかつ店などで経験を積んできた菊井誠さんが形にする。ご飯は羽釜で炊き、味噌汁も京揚げを具にサンショウを効かせた逸品。でも「とんかつは日常のご馳走」と、並なら定食にして2,000円でお釣りが来る価格にもこだわった。食券を購入し注文するスタイルだが、ヒレやロースと一緒にクラフトビールや純米酒の銘柄、「ナチュラルワイン」が並ぶあたりも今井さんならでは。とんかつだけでは帰れない。

上ロースかつ定食

低めの温度で時間をかけて揚げてなお、豚に火を通したときの香り、肉そのものが持つ旨味がしっかりと出る宮崎県産黒豚をメインで使用する。さくっと歯切れよく、脂身もクリアで雑味なく、香ばしい衣と一体になって嚙むほどに旨い。塩、辛子、無添加のウスター、中濃ソースでお好みの味に。2,400円。

厚切りヒレかつ

熱が伝わる鍋底からの垂直方向に、豚肉の繊維の向きを合わせ、肉を傷めないように火を通していく調理法は、「焼き」からのアプローチ。卓上に用意されている京都〈志ば久〉の生柴漬を、薬味代わりに。1個900円。

ヒレかつサンド

揚げたてのヒレかつを〈パーラー江古田〉の食パンでサンド。テイクアウトもできる。店内では軽くトーストして提供。持ち帰りの際は食べる前にトーストし、とんかつも温められるよう焼かずに包む。こまやか。1,300円。

料理長の菊井さん。赤坂〈フリッツ〉、巣鴨〈とんかつ亀かわ〉などで勤務。

ブンカ堂(立石)

定番から変わり種まで「豚旨し」な下町酒場。

ショウガ焼きに豚タン塩煮込み、タイ風発酵ソーセージといった、そそるつまみたち。「いわれてみれば、豚ばっかですね」と店主の西村浩志さん。揃えたつもりはなくとも、バラ肉のショウガ焼きは、冷えたビールとの相性はもちろん、純米燗酒で脂身の甘さを味わうのもいい。塩煮込みの優しい味は、ナチュラルワインの旨味とぴたり。丁寧な味作りも相まって、店が推す酒との相性は、文句ナシ。西村さんは、立石生まれの立石育ち。今や町を代表する名酒場〈二毛作〉を立ち上げ、同店移転後は跡をおでんの店〈丸忠蒲鉾店〉としてもり立てた。満を持しての独立、店名は祖父と父が営んでいた玩具店の屋号を引き継いだ。前店の常連から子供時代に玩具店の客だった年配客まで続々と集い、新店らしからぬ貫禄である。ちなみに豚バラ肉で作るおつまみカレールー「カルー」も名物。「ご飯が欲しい」という客に「買ってきて」なんてやりとりも味だ。

生姜焼

すりおろしたリンゴとタマネギがたっぷり、わずかにニンニクを効かせた自家製だれの甘辛味にビールが、純米酒が、いやワインも進む。ボリュームにも大満足な、酒場のご馳走。マヨネーズ、サラダと一緒に。揚げたてコロッケでも有名な立石駅前の精肉店〈愛知屋〉から仕入れる豚バラ肉で。600円。

発酵ソーセージ

タイ北部のソーセージ・サイウアは、馴染みの大塚日本酒酒場のレシピを手本にアレンジを加えたもの。レモングラスの清涼感と唐辛子のピリ辛風味が、味を引き締める。針ショウガとマーマレードを添えて。400円。

豚タン塩煮込み

もつ煮込みをウリにする大衆酒場が多い立石で、一味違う煮込みを、と豚タンに着目。豚タンと大根、別々に下ゆでし、鶏だしと塩で味を調えた優しい煮込みは、北イタリアのボッリートみたい。白ワインと。600円。

西村さん。若い世代を町に呼び、“酒都” 立石をアップデートさせてきた立役者。

とんかつ七井戸

電話:080・8190・1331
営業時間:11時30分~15時、18時~20時(売り切れ次第終了)。
酒:ビール(小瓶)500円~、日本酒1種700円、グラスワイン800円。
価格:ロースかつ定食1,300円、ヒレかつ定食1,900円ほか。
席数 :カウンター8席、テーブル4卓8席。

東京都渋谷区神宮前3−42−11 ローザビアンカ104。日曜・月曜・土曜夜休。東京メトロ外苑前駅から徒歩7分。2018年12月9日オープン。予約不可。地鶏かつ定食1,900円、極上部位を使った上リブロースかつ定食3,200円などのスペシャルメニューも。ビールは修善寺〈ベアードブルーイング〉、日本酒は奈良〈久保本家〉のにごり酒、ワインは山梨県〈共栄堂〉と、酒は少数精鋭の品揃え。

ブンカ堂

電話:03・5654・9633
営業時間:15時~24時(日・祝~22時)。
酒:生ビール600円、日本酒20種(正一合)750円~、グラスワイン750円~。
価格:つまみは約15種。1品200~800円。
席数 :カウンター10席。

東京都葛飾区立石4−27−9。不定休。京成電鉄京成立石駅から徒歩3分。2018年12月22日オープン。予約可。刺し身や〆サバ600円~、合鴨ロース煮700円など、豚肉以外のつまみももちろんアリ。メンタイ、ナッツなどの小つまみ200円~も。メニューは時期替わり。ワインは、赤白各3種にスパークリング1種をグラスでも提供。フランスを中心に、日本の注目の造り手のものも紹介している。

佐々木ケイ

photo/
Naoki Tani

本記事は雑誌BRUTUS888号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は888号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

No.888
WE LOVE 平成アニメ(2019.03.01発行)

関連記事