音楽・ラジオ

グラミー賞の日に武道館で公演したジャネットの心意気。

西寺郷太のポップ警察〜名曲・珍曲・捜査録〜

No. 888(2019.03.01発行)
WE LOVE 平成アニメ
ダディ・ヤンキーとコラボ。「今を生きるの。明日じゃなくて」と歌うMVがめちゃキュート。安室ちゃんも彼女のような50代を目指してほしかった。

『メイド・フォー・ナウ』ジャネット・ジャクソン

2月上旬は僕にとって「ジャクソン・ファミリー」惑星直列。まずは、ジャクソン家次男で、ジャクソン5、ジャクソンズのティト・ジャクソンが来日。インタビューなども含め、週3回会いました。ティトがLAに帰った翌日、末妹ジャネットが武道館公演!
 
このライブが自分の人生でもベスト級の感動で。52歳の彼女がキレキレで踊りまくり、ヒット曲を細かく繋ぎ、映像と絡めて連打。なにより僕にはこの夜のショーのすべてが、解決の糸口が見えない人種差別や、今、世界的な問題となっている女性と男性をめぐる不平等、ちょうど同日に行われていたアメリカのグラミー賞などへの毅然とした意思表示とも思えたんです。それは付け焼き刃ではなく、30年前から彼女がキャリアを通じて発信し、貫かれてきたメッセージ。まさに現代に響いている、また世界がジャネットを必要とする時代が来た、と。
 
ジャネット自体が、グラミーからは冷遇されてきました。まず、1986年の『コントロール』で最優秀アルバム賞にノミネートされながら受賞ならず。この年受賞したのがポール・サイモンの『グレイスランド』ですから、年配の白人男性が主に投票するグラミーが「そういう賞」ってことでしかないわけですが。ともかく『リズム・ネイション 1814』『ジャネット.』
など名作が無視されてきた現実があります。
 
今年のグラミーは「女性」のグラミーだと喧伝されたものの、スタートまでにプロデューサーと揉めたアリアナ・グランデが辞退したりとトラブル続き。そもそも、2016年にケンドリック・ラマー『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』や「オールライト」にきちんと評価を与えなかったことが後手後手に回ってどうしようもない状態になった、と僕は思いますね。スポーツで明らかな誤審の後に、審判が次のプレーで調整する、それでまた冷めちゃう、みたいな。
 
登壇したドレイクが「賞など関係ない、君の歌を覚えて、お金を払って観に来てくれるファンがいれば君は勝者だ」とスピーチ。まさにジャネットはわざわざ声に出さずともそのことを完全に悟っていたからこそ、この日も東京で歌ってくれたんだな、と。

文・題字 西寺郷太

にしでら・ごうた/ライムスターの3人と初共作した「今夜はローリング・ストーン」を含む、ノーナ・リーヴスのアルバム『未来』が完成!

編集/
辛島いづみ

本記事は雑誌BRUTUS888号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は888号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.888
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