エンターテインメント

ニューアルバムを発表した翌週に、もう1枚新譜をリリースした曽我部恵一。

BRUTUSCOPE

No. 886(2019.02.01発行)
死ぬまでにこの目で見たい日本の絵100
曽我部恵一

突然発表されたラップアルバム『ヘブン』に続き、極上のメロウ作を発表。どうしたんですか、曽我部さん!?

曽我部恵一が、昨年12月7日に『ヘブン』、続いて14日『There IS no place like TOKYO today!』という2枚のアルバムを連続で発表した。自身で〈Rose Records〉を立ち上げてから、さまざまな名義を使い分け、リリース数の多い曽我部だったが、前作からのインターバルが1週間というのは初めてのこと。
 
さらに、音楽的にも衝撃的なのは、まず『ヘブン』は完全にラップアルバムだということ。過去の作品でもPUNPEEが所属しているPSGを迎えるなど、曽我部のラップやヒップホップへの嗜好は散見された。しかし『ヘブン』では自らラップしている。普段ギターで爪弾く言葉より、ラップゆえ韻を踏むための言葉遊びも見受けられるが、よりシチュエーションが具体的となり、本人のリアルな心境が吐露されているように聞こえる。リリックのテーマは、ホームである下北沢における森羅万象が中心。トラックメイクも本人によるもので、ブルージーな生演奏を再編集したであろう「Bungaku」、サイケデリックな鍵盤楽器のループが心地よい「Gravity Garden」など。曽我部の声、ラップと相まって、非常にピースフルなアルバムになっている。
 
カーティス・メイフィールドの名盤タイトルに敬意を表した『There IS no place like TOKYO today!』は、もう少し歌に寄せているが、サンプリングやエディットを多用している点で、『ヘブン』と地続き的な作品だ。しかし、ここでは完全に韻を踏まず、言葉遊びもほどほどに、メロディを重視している。60年代LAでヒッピー文化を享受した世代の孫世代、タイラー・ザ・クリエイターフランク・オーシャンなど、多幸感を内包しながらも、メロウで浮遊感のあるR&Bに近い。
 
曽我部自身のライナーノーツには、アルバムのリリースについて、影響やキッカケなど、説明はある。しかし、それ以上に、現在は言いたいこと、言葉が自身の脳内に溢れているのではないだろうか。次の作品にどう反映されるか、楽しみに待ちたい。

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text/
Katsumi Watanabe

本記事は雑誌BRUTUS886号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は886号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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死ぬまでにこの目で見たい日本の絵100(2019.02.01発行)

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