エンターテインメント

サイエンスの思考で アートの概念を広げる│選者 伊藤亜紗( 美学者 )

理系読書。

No. 884(2018.12.15発行)
危険な読書

『人間をお休みしてヤギになってみた結果』トーマス・トウェイツ/著

人間をやめて、悩みから解放されたヤギになりたい。そこで彼が考えた行動は3つ。「ヤギの思考になるため脳に刺激を与える」「四足歩行で歩くための装身具を作る」「草を食べるための胃を作る」。イグノーベル賞を受賞したドキュメンタリー。新潮文庫/940円。

アートとは何か。既存のアートの概念を広げる、科学的な思考を持つ作家やアート的思考を持つ科学者の今、そして未来を知る3冊。

美術館で展示される作品だけがアートとは限りません。アート的な発想とは、世の中のスタンダードに対して違う可能性を探り提案していく運動。中でも科学者の発想の中にあるアートは面白い。『人間をお休みしてヤギになってみた結果』は、自らの体をなげうって本気でヤギになるノンフィクション。ヤギの体の構造を分析し専門家に取材をし、4つ足で立つための器具を作ったり、4つの胃で消化するための人工胃腸を開発する。ふざけたアイデアを真面目に科学的に構築していくところが鬼気迫ります。最近注目の『バイオアート』で紹介される作品は芸術の域を超え、宗教観、生命観の議論が誘発されます。アートサイエンス、双方の言葉を知ると作品がさらに面白くなるのでは?

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『ART SCIENCE IS. ─アートサイエンスが 導く世界の変容』塚田有那/編・著

アートサイエンスを行き来して活動するキーパーソンの取り組みと声をまとめた本。ビー・エヌ・エヌ新社/2,000円。

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バイオアーティスト50名の活動を紐解き、バイオ技術によりもたらされる未来を考察。ビー・エヌ・エヌ新社/3,400円。

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いとう・あさ

東京工業大学准教授。専門は現代アート。著書『どもる体』(医学書院)。

text/
Keiko Kamijo

本記事は雑誌BRUTUS884号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は884号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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危険な読書(2018.12.15発行)

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