映画書籍・読書

ガイ・フォークスとムーアと会田誠。

滝本誠のCAFÉ NOIR

No. 883(2018.12.01発行)
Mid-Century in Our Life

11月5日は、ガイ・フォークス人形がイギリス中で燃やされる日。彼は国会議事堂を吹っ飛ばそうとして捕まった、400年前のテロリストというのが一般的な認識だが、このフォークス・イメージを逆転させて、圧制に対する抗議者としてとらえる見方もある。アラン・ムーアのコミックス(そして実写映画化作品)『Vフォー・ヴェンデッタ』は、後者だ。このフォークス・スピリットの双面をわかりやすく図解した(マッチ箱デザインとして)不穏の天才美術家がわが国にいて、いうまでもなくそれは会田誠である。片面にはマッチにボーと火がついて〈惡〉の文字、もう片面には炎上する国会……。かなり前に多くの美術家が参加したマッチ箱デザイン展の会田作品だが、これはポケットに入れて持ち歩ける最小の〈危険な会田誠作品〉である。

さて、ムーアは、他にも『ウォッチメン』『バットマン キリングジョーク』他、コミックスの分野を過激で独創的な方向に導いてきた。そのムーアの魔術思考の集大成と位置付けられる大作が、『プロメテア』3部作である。柳下毅一郎訳で小学館集英社プロダクションの刊行。J・H・ウィリアムズⅢの画力もあって、くらくらする極彩の世界へと否応なく引き込まれる。目下、『プロメテア2』まで出ていて、『3』は来年に刊行が予定されている。とにかく、タロットからカバラまで、基本はムーアが崇める魔術師アレイスター・クロウリーの様々な著作であるが、とにかくプロメテア憑依のヒロインがそこいらの女の子ということもあり、彼女が体験する驚きの世界はわれわれ初心者にも入り込みやすい構造である、一応はw。『1』の後半のタロットを経て、『2』においては、全編を通して、カバラ〈生命の樹〉の探求がヒロイック・ファンタジーさながらに展開して圧巻。かつて見たこともない思考アクションなのだ。

思い出すのは、『ステーション・トゥ・ステーション』時代、クロウリー主義者時代のデヴィッド・ボウイだ。ボウイはこの頃、壁と床に〈生命の樹〉を描き続けたものだ。アクション化されてるとはいえ、そこは西欧神秘主義の神髄部分、手ごわく困惑するのはやむをえない。

たきもと・まこと/東京藝術大学卒業後、編集者に。著書に『映画の乳首、絵画の腓 AC 2017』(幻戯書房)。

本記事は雑誌BRUTUS883号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は883号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

No.883
Mid-Century in Our Life(2018.12.01発行)

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