エンターテインメント

必要な家具

菅原 敏「詩人と暮らし」

No. 883(2018.12.01発行)
Mid-Century in Our Life

何ひとつ持たずに
三年間 過ごしていたものだから
女の家に転がり込んでも
使い方も 意味さえも分からなかった
服は着たきり
どこでもが食卓
本は一冊
疲れたら溜息に腰掛け
眠くなれば丸くなって眠る
必要だったものは
紐を引っ張ると 
小さな昼を連れてくる
この魔法だけが特別だった
それ以外は
私と彼女の間の
単なる障害物でしかなかった

memo】昔、祖母の家にはシーツなどの寝具がしまってある古びたタンスがあった。毎年夏に遊びに行っては、そのタンスの中に敷いてある新聞紙の日付を見るのが好きだった。自分が生まれるよりも前の日付が記されている新聞。タンスの引き出しを姉と覗き込んで、過去の世界の端っこを指でなぞっていた。(敏)

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すがわら・びん

詩人。新詩集『かのひと 超訳 世界恋愛詩集』(東京新聞)発売中。国内外での朗読公演など幅広く活動中。

編集/
西野入智紗

本記事は雑誌BRUTUS883号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は883号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.883
Mid-Century in Our Life(2018.12.01発行)

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