エンターテインメント

クイーンは爆音で聴きましょう。

西寺郷太のポップ警察〜名曲・珍曲・捜査録〜

No. 882(2018.11.15発行)
続・いまさら観てないとは言えない映画。
『ボヘミアン・ラプソディ』オリジナル・サウンドトラックタイトル曲「ボヘミアン・ラプソディ」 ほかクイーンの代表曲を収めたベスト盤的なサントラ。入門編としても最適。未発表の貴重音源も収録している。

あらためて実感する伝説のバンド〈クイーン〉のすごさ。

1973年生まれの僕は、「クイーン直撃世代」ではありませんでした。僕がリアルタイムで「洋楽」に夢中になったのは、マイケルジャクソンの「スリラー」がお茶の間に浸透した83年から。9歳の頃です。当時は「MTVブーム」全盛期。若くてカラフルなファッションに身を包んだデュラン・デュランやカルチャー・クラブ、ワム!が一世を風靡していました。そんな中、たまに出くわすクイーンのビデオは異質。タイツに胸毛、口髭を蓄えたフレディ・マーキュリーのルックスが、当時小4の僕にはインパクトがありすぎで(笑)。

後追いで色々わかってくるのですが、ちょうどその頃、ベテランの領域に達していたクイーンはメンバー間の軋轢と混迷の中にいたようです。1984年、レディー・ガガの名前の元になったことでも知られる大ヒット・シングル「RADIO GA GA」を放った後、いったん休止。フレディは税金逃れのため移住したドイツのミュンヘンでソロアルバム制作を開始。

日本ではソロシングル「ボーン・トゥ・ラヴ・ユー」がノエビア化粧品のTVCMに使われて流行しました。当時のノエビアは最新洋楽をタイアップに使っていて。ジェット機が青空を飛び、着陸すると美女がパイロットだった、みたいな一連のCMで「ブルー・ジーン」を歌うデヴィッド・ボウイを初めて知り、「こんな声が低い人間いるんや!」と驚いたわけですが、フレディは全く逆。ティアドロップ型のサングラスをかけた強面の見た目から、天使のようなハイトーン・ヴォイスが放たれるギャップがすごくて。

現在公開中のクイーンの伝記映画『ボヘミアン・ラプソディ』を観ました。本当にすごい映画で。事実に基づきつつ、複数の場面で実際の出来事と時系列は変えています。例えば、フレディがAIDSと診断されたのは87年のイースター直後ですが、映画では85年夏のチャリティ・イベント『ライブ・エイド』前に彼が病を認識しメンバーに告げてステージに向かった設定にしている、など。でも、ともかく爆音でクイーンの名曲、名演が細部までこだわりまくりの演者と製作陣によって連打される感激で、エンドロールを見つめながら(自分でも意外でしたが)うっすら泣いてしまったんです。

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文・題字 西寺郷太/にしでら・ごうた
音楽プロデューサー、ノーナ・リーヴスのシンガー&ソングライター。ただいまニューアルバムをレコーディング中!

編集/
辛島いづみ

本記事は雑誌BRUTUS882号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は882号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.882
続・いまさら観てないとは言えない映画。(2018.11.15発行)

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