映画

アメリカの真実を目にして、 極東の地から何を思う。

みんなの映画 by Takashi Homma

No. 881(2018.11.01発行)
札幌の正解

『華氏119』

ホンマタカシ(以下H) 
前回、ワイズマンのLGBTや移民問題、人種間差別を浮き彫りにしたジャクソンハイツのドキュメンタリー(*1)を観たけど、マイケル・ムーア(*2)は同じアメリカでトランプに迫ってくれたね。
BRUTUS(以下B) 
ムーアは、『ボウリング・フォー・コロンバイン』で銃社会に対して、『華氏911』ではジョージブッシュに迫りました。
H 
トランプがなぜ当選することになったか? それは、オバマや民主党にも、もちろん、熱狂する大衆にも責任があるということだったりすることも付け加えつつ、そして、ミシガン州フリントの水質汚染問題。今、なぜ、そういうことが起きたのか? という社会の構造自体をムーアは、丁寧に教えてくれているよね。知事の邸宅に汚染されたフリントの水を放水するというパフォーマンスまで交えてね(笑)。ワイズマンは、一種のニヒリストというか、政治問題を扱っても、あえてメッセージは出さず、ただ淡々と視聴者の前に放り出してくれる。しかし、ムーアは、派手なパフォーマンスをしても、どこか、寂しげな表情をしている。そして、ムーアは、決して希望を捨てているわけではなく、まだ間に合う とにかく、行動を とメッセージを送り続けていると思うんだよね。
B 
確かに前向きだなと思います。
H 
そんな中、こちらは弛緩した生ぬるい空気漂う日本で、ノホホンとしているわけだけどね……。

*1 フレデリック・ワイズマンが監督を務めた映画『ニューヨークジャクソンハイツへようこそ』。*2 1954年生まれのジャーナリスト、ドキュメンタリー映画監督。代表作に『華氏911』など。

『華氏119』監督:マイケル・ムーア/製作総指揮:ティア・レッシン/出演:アメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプ/配給
:ギャガ/11月2日、TOHOシネマズ シャンテほかで全国順次公開。©2018 Midwestern Films LLC 2018 ©Paul Morigi

本記事は雑誌BRUTUS881号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は881号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

No.881
札幌の正解(2018.11.01発行)

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