その他

ハゲとグルメ。

男の色気

No. 881(2018.11.01発行)
札幌の正解

俺のサロンのある東京神田といえば、江戸の昔から食通が集まる場所。それは今も変わらない。名店、老舗から、立ち食いやソウルフード、ジャンクフードまで、ありとあらゆる食欲を満たすグルメな場所である。特に、カレーは激選区と言われ、俺の仲間内のカメラマンやスタイリストが集まると、どこのカレーが一番旨いかで、あわや取っ組み合いになるほどの論争が始まることもしばしば。だが、しばし、彼らの頭は満たされていないように思える。俺は常々、グルメにはハゲが一等似合うと信じている。俺が勝手にそう言っているのではない。昔から、ハゲは旨い店を引き立てている事実があるのだ。例えば、鮨屋のカウンター。トロをつまむ旦那の姿にロン毛を想像する人は少ない。やはり、柳家小さんのようなハゲこそが似合う。もちろん、天ぷらもしかり。〈ハゲ天〉なんて名前の店があるくらいだ。蕎麦もロン毛だと蕎麦を手繰っているのか、自分の髪を手繰っているのかわからない。和食だけではない。イタリアンの名店のメニューブックに描かれているお客の頭にはだいたい毛がない。その話をあるグルメの編集者にしたら、フランスの老舗レストランのメニューや看板に描かれているお客もハゲが多いとか。絵になるグルメな男はハゲている。

文・矢口憲一

やぐち・けんいち/1975年生まれ。ヘア&メイク兼ハゲ探求家元。2015年に帽子を脱ぎ捨てる。弊誌やPOPEYEなどで活躍。美容室〈駿河台矢口〉店主。

illustration/
Aiko Fukuda
edit/
Asuka Ochi

本記事は雑誌BRUTUS881号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は881号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

No.881
札幌の正解(2018.11.01発行)

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