エンターテインメント

〈スタジオ54〉のドアマンに追い返されたシック。

西寺郷太のポップ警察〜名曲・珍曲・捜査録〜

No. 880(2018.10.15発行)
洋菓子好き。
ディスコ音楽の帝王です。レディー・ガガやエルトン・ジョンも参加。めちゃクールなスーパーモデルのジャケ写真は40年前のデビューアルバムのジャケをセルフカバーしたもの。

『イッツ・アバウト・タイム』ナイル・ロジャース&シック

シックは、1977年にデビューした伝説のディスコバンド。レッド・ツェッペリンなどのハードロックにも心酔した彼らの魅力は、「パワフルなリズム隊とエレガントなムードの融合」。多くのアーティストに模倣されました。何より中心メンバー3人が猛者揃い。まずはカッティング・ギターの名手ナイル・ロジャース。ダフトパンクにファレルとともにフィーチャリングされた「ゲット・ラッキー」で知った若い世代も多いかと思います。実はシックは巨大なディスコブームの反動で、80年代になりバンドとしての勢いを急速に落とします。しかし次に訪れた「MTVブーム」の中で、ナイルはデヴィッド・ボウイの「レッツ・ダンス」、マドンナの「ライク・ア・ヴァージン」、デュラン・デュランなどのプロデューサーとしても大成功。このたび、25年ぶりにナイル・ロジャース&シックとして新作アルバムをリリースしました。ナイル以外の2人、ベーシストのバーナード・エドワーズとドラマーのトニー・トンプソンは残念ながらすでに亡くなっています。嗚呼、ダンスクラシック「グッド・タイムス」での野太いベースラインとタイトなリズム! 僕が人生で最も愛するリズム隊です。1978年、夏……。多数のセレブが訪れることで名を馳せたニューヨークの人気ディスコ〈スタジオ54〉。モデル出身で大スターとなったグレイス・ジョーンズが、旬のプロデューサー、ナイルとバーナードに仕事依頼。「シック、と名乗れば入れるわ」とグレイスに告げられた2人は喜び勇んでお洒落をし、〈54〉に出かけました。しかし、当時はまだ黒人アーティストがメディアに頻繁に登場できない時代。シックの楽曲そのものはディスコでかかりまくっているのに、ドアマンは2人の顔を知りません。そこで「シック、フー?(誰やねん?)」と追い返されてしまう。悔しさと怒りでふたりはすぐ家に帰り「ファック・オーフ!」と連呼しているうちにだんだん気持ちよくなってきて1曲完成させてしまったそうで(笑)。 その結果、歌詞を変え、「フリーク・アーウト!」、彼らの代表曲「LE FREAK(おしゃれ、フリーク)」となったのでした。


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にしでら・ごうた/音楽プロデューサー、ノーナ・リーヴスのシンガー&ソングライター。来春発売予定のアルバムをレコーディング中。

edit/
辛島いづみ

本記事は雑誌BRUTUS880号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は880号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.880
洋菓子好き。(2018.10.15発行)

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