書籍・読書

ジャンルの垣根を越え、常に挑戦し続ける作家・筒井康隆。

BRUTUSCOPE

No. 880(2018.10.15発行)
洋菓子好き。
筒井康隆作品の数々。
「断筆宣言」記念人形 1993年。
筒井康隆『虚航船団』原稿。
筒井康隆。撮影:網中健太

その膨大な数の作品を振り返り、多岐にわたるジャンルへの挑戦、作家以外の顔も知ることができる初の大規模展覧会。

 現代文学の最高峰・筒井康隆の世界を紹介する初めての大規模展覧会世田谷文学館で開催されている。1934年大阪で生まれた筒井康隆は、60年に江戸川乱歩が編集する雑誌『宝石』に掲載された、「お助け」でデビューした。同年、SF同人誌『NULL』を発行。デビュー後は星新一、小松左京とともに「SF御三家」と呼ばれ人気を博した。彼ら3人は日本にSFを根づかせた、SF界の草分け的存在といえるだろう。その後、筒井はSFの枠にはとどまらない実験小説を次々と発表する。エンターテインメントと純文学の垣根を自由に行き来するその姿は、常に読者を驚かせ、魅了し続けている。今回の展覧会は、すべてにおいて規格外と言われる筒井康隆の魅力をあますところなく感じることができるものとなっている。彼の小説は、一般常識などの制限も、文学ジャンルなどの固定もなく、常に新しい試みを読者に提示し続けてきた。数多くの作品群の多彩なジャンルを目の前にしたとき、これらが、すべて筒井一人の脳内から生み出されたという事実に衝撃を覚えるであろう。
 また、筒井康隆学生時代、日活ニューフェイスに応募するほどに演劇にのめり込んだ。20歳のときには劇団・青猫座に所属し、82年には自身が座長となり〈筒井康隆大一座〉を立ち上げる。今回の展示では、この貴重な公演の映像を紹介し、俳優・筒井康隆の活躍を見ることができる。
 もう一つの展覧会の見どころは、読者との交流や、多彩なエピソードを知ることができる点だ。各界に熱烈なファンを持つことで知られる筒井康隆のファンクラブは76年に発足した。名誉会長はジャズピアニストの山下洋輔。筒井のファンの読者は「ツツイスト」と呼ばれている。ファンたちによって集められた資料を展示したコーナーでは、その熱量を感じることができる。デビューから今日に至るまで、挑戦をし続けるその姿は、私たちに多様性と自由な発想の大切さを教えてくれる。

text/
Saki Miyahara

本記事は雑誌BRUTUS880号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は880号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.880
洋菓子好き。(2018.10.15発行)

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