アート

7年の「まんが道」を振り返る展覧会。

BRUTUSCOPE

No. 880(2018.10.15発行)
洋菓子好き。
Ⓒ藤子スタジオ
藤子不二雄Ⓐ ふじこ・ふじおえー/1934年富山県氷見市生まれ。51年から漫画制作を始める。『忍者ハットリくん』『怪物くん』『プロゴルファー猿』『笑ゥせぇるすまん』など数多くの作品を手がけ、今も多くの人々に愛されている。ブラックユーモア作品を次々に生み出し、「黒藤子」の異名を持つ。84歳の今もなお現役で、漫画界の生きた伝説でもある。2005年文部科学大臣賞、08年旭日小綬章を受章。

ブラックユーモアの名手・藤子不二雄Ⓐが描く不思議で奇妙な世界に迷い込む。

 誰しもが一度は目にしたことがあるだろう藤子不二雄Ⓐの作品。伊賀の里からやってきた忍者が普通の家庭に居候する『忍者ハットリくん』や怪物界のプリンスが人間界にやってきて大暴れする『怪物くん』など、漫画はもちろん、アニメ化や実写化もされ幅広い世界に愛される作品を手がけている。このような明るいギャグ漫画はもちろん、スポーツ漫画『プロゴルファー猿』、劇画で毛沢東の伝記を描いた『劇画 毛沢東伝』、自伝的な作品である『まんが道』などを描き、多作で、多彩なジャンルを手がける作家として知られている。
 もう一つ、藤子不二雄Ⓐ氏を語るうえで、避けて通れないのが大人向けのブラックユーモア作品である。闇のなかから不穏な笑い声とともに現れる、奇妙なセールスマン・喪黒福造はご存じの方も多いだろう。「ドーン!」と喪黒福造に指をさされたら最後、そこには悲痛な運命が待っている。ほかにも、陰気な少年が自分をいじめた相手に、魔力をもって復讐していく『魔太郎がくる!』や、ひ弱な中学生の顔を持つ主人公が、「ブラック商会」を名乗り、悪人にさまざまな明細で請求書を突きつける『ブラック商会変奇郎』、揺れ動く人間の心を描き出した短編など、奇妙な世界を生み出す名手として知られる。この多面性を持つ作家性が、幅広い世代に、年月を超えて愛される所以であろう。
 今回の展覧会では、彼の67年間の漫画家生活を振り返り、多岐にわたるジャンルを楽しめる機会となっている。日没後には、会場エントランスにここでしか見られない幻想的な映像が出現。奇妙な世界を見るだけでなく、実際に自分がそこに迷い込んでしまうような構成になっている。漫画界のレジェンドが描く不思議な世界を体感できる展覧会で、ココロのスキマを埋めてみてはいかがだろうか。

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Saki Miyahara

本記事は雑誌BRUTUS880号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は880号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.880
洋菓子好き。(2018.10.15発行)

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