noura/BISITO

グルマン温故知新

No. 879(2018.10.01発行)
心を開放する旅、本、音楽。

風情ある町並みを彩る、熟練料理人のプチレストラン。

浅草神楽坂、風情ある東京の花街に相次いで20席以下のフレンチの良店がお目見え。ともに長年、地域に根ざして町を盛り上げてきたシェフの原点回帰な店で、フランスの郷土色が香る味作りも共通。ご近所ならもちろん、わざわざ出かけてでも味わう価値アリ!

ステックフリット 赤身の強いオーストラリア産アンガス牛を〈オマージュ〉で使用する漢方和牛の牛脂で焼いてまろやかな旨味を纏わせ、フリットはベルギースタイルで。表面にはガリッと黒コショウを効かせ、ハーブバターを添えて。昼2,000円、夜2,800円〜のプリフィックスコースの一品(昼はプラス600円でオーダーできる)。

パンスフレ 夜のコースのアミューズとして提供。メレンゲとフロマージュブランを加えた軽やかでコクのある生地をふわっと焼き上げ、メープルシロップ、トリュフオイル、岩塩で風味づけ。シャンパーニュとぜひ(写真は2人分)。

メツゲライクスダ製トゥールーズ風ソーセージ ナイフを入れるとギュッと手応えを感じるソーセージは芦屋〈メツゲライ・クスダ〉製。〈オマージュ〉でも使うとびきり野菜のミネストローネを付け合わせに。昼2, 000円、夜2,800円〜のプリフィックスコースの一品。

松本シェフ。荒井シェフとは仏〈クロ・デ・シーム〉修業時代からの20年来の付き合い。

気取りがなく上品なしつらえ。

noura

浅草

星付きクオリティの味を2皿から気軽に。

 小さく店名が刻まれた大理石の看板も、装飾を廃したミニマムな店内も、モダンガストロノミーのダイニングを彷彿させる佇まい。記号のような店名の由来を尋ねると「本店“の裏”だから」と、荒井昇シェフ。なんと明快、かつ、洒落ている!
 生まれ育った浅草でレストラン〈オマージュ〉を開き18年。地域密着のカジュアルフレンチを食通が集うファインダイニングに育てた。満を持しての2軒目は原点に返り、ベーシックを、今だからできるクオリティで。全国の生産者から届く選りすぐりの食材を2店で共有。野菜のスープを添えたソーセージや豪快なステックフリットといったビストロの定番は、衒いなく上質で確かな味だ。厨房は、荒井シェフとは旧知の仲の松本義夫シェフが仕切る。ハーブやオリーブオイルが香る軽やかさは、2人が修業を共にした南仏のエッセンスだ。前菜、主菜2皿のコースは夜も2,800円から! 普段着で味わえる一流である。

トリップ ア ラ ニソワーズ オレンジとレモンのコンフィを加え、爽やかに仕上げるのがア ラ ニソワーズ。トマトとニンニクは地中海の香り。といっても前面には出さず、白ワインでじっくり煮込んだトリッパの旨味を引き立てる脇役程度に効かせてある。しっかり冷やした蜜っぽい白ワインやロゼワインと抜群の相性。1,850円。

アミューズ 飴色に炒めたタマネギとアンチョビ、黒オリーブのペーストを生地にのせて焼いたピサラディエールと、ヒヨコ豆の粉で作る生地を揚げたパニス。ニースでとてもポピュラーな2品をアミューズとして一皿に。500円。

サラダ ニソワーズ 日本でもビストロの定番としてお馴染みの一品。ゆで卵、自家製のツナ、オリーブ、アンチョビといった味のベースは基本に忠実に、ジャガイモやインゲンはあえて使わず、ワインのつまみとして仕上げてある。1,300円。

伊藤シェフ。料理からサービスまですべて1人でこなす。

カウンター中心。エントランス脇には小さなテラスもある。

BISITO

●飯田橋

南仏ニースの料理に特化し激戦区で勝負。

 昨年、23年の歴史に幕を下ろした神楽坂のスペイン料理店〈エル・カミーノ〉で7年、店の顔として厨房で腕を振るってきた伊藤洋平シェフが毘沙門天裏に小さなビストロを開いた。実は伊藤シェフ、それ以前はフレンチ畑で十余年修業を重ねた料理人。「スペイン料理店を」と乞われる声もあった中でのビストロ開業は、これまでの師匠やスペイン料理一筋のプロフェッショナルに対する敬意から。
 メニューは4年の修業時代を過ごしたニースの料理に絞った。飴色タマネギをパイ生地にのせたピサラディエールなどの伝統料理を、フィンガーフードスタイルで名刺代わりのアミューズに。ボリューム満点のサラダニソワーズやオレンジが香るトリップ ア ラ ニソワーズも、フレンチ激戦区・神楽坂の食べ慣れた客には馴染みの味。ハーブや柑橘で奥行きや広がりを感じさせつつ、塩と火入れに迷いがない味にキャリアを感じる。熟練のニューフェイスの登場だ。

photo/
Naoki Tani
text/
佐々木ケイ

本記事は雑誌BRUTUS879号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は879号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

No.879
心を開放する旅、本、音楽。(2018.10.01発行)

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