書籍・読書

柿について

菅原 敏「詩人と暮らし」

No. 879(2018.10.01発行)
心を開放する旅、本、音楽。

柿について

少し冷たい雨にぬれながら
木の枝にぶら下がっている
ひとつの柿がありました
なぜかぽつんとひとつでした
その昔
「わたしは柿くらいでいいの
 そんなに人気はないけど
 好きなひとには好かれて
 自分の色も持ってて
 渋みもあるし
 わたしは柿くらいがいいの」
そう言っていた女の子は
ひとしれず柿の実になってしまったので
クマはずっと見上げて あの子が
落ちてくるのを待っていましたが
集まってくるカラスたちに
ついばまれてなるものかと
木に登って器用に前脚で柿をもぎ
部屋のテーブルにひとつ
柿をおいて
秋を眺めるのでした

memo】わたしたちは何故こんなにも柿の種を食べてしまったのだろう。ピーナツと一緒に。すべての種を植えてきたなら、今頃この国は柿の木が生い茂る森の国で、熊たちは飢えることなく、人と熊が半々に暮らす国になっていたことだろう。そんなことを考えながらビールを飲んで、秋を迎える支度中。(敏)

すがわら・びん/詩人。新詩集『かのひと 超訳 世界恋愛詩集』(東京新聞)発売中。国内外での朗読公演など幅広く活動中。

edit/
西野入智紗

本記事は雑誌BRUTUS879号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は879号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

No.879
心を開放する旅、本、音楽。(2018.10.01発行)

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