旅と地域

Schäferei Wummeniederung(シェーファライ・ヴメニーデルンク)

ドイツ・ハンブルグ/オオカミと野生を分かち合う旅。

No. 879(2018.10.01発行)
心を開放する旅、本、音楽。
羊が放牧されるのは灌木や植林された松の苗が茂る草原。羊たちが草を食べることで松が無尽蔵に育たず、生態系のバランスが保たれている。自然というのは、よくできている。
ハイデシュヌッケ種の羊は顔も足も真っ黒。世界的にも稀少だそう。
猛然と侵入者を追う犬たちも、飼い主には従順で人懐っこい。
ターキッシュ・カンガール犬はオオカミと同じくらい立派な体格。
走り回った体を冷やすために、穴を掘ってお腹を土に擦りつける。

オオカミと共存する道を選んだ新しい羊農家のあり方とは?

 野生オオカミ復活の兆しが徐々に見えつつあるリューネブルク周辺。そんな中、リューネブルクの牧場では近年、オオカミと共存するための新しい動きが生まれているという。
 リューネブルガー・ハイデと呼ばれる自然保護区の一帯は牧羊が盛んな地域。この地域でしか飼育されないハイデシュヌッケという羊はリューネブルクの名産品だ。ベニングさん夫妻が営む〈シェーファライ・ヴメニーデルンク〉は850頭の羊を飼う農家。近年、オオカミの足跡を見るようになり、プロテクトドッグによる対策を始めた。
「もともと羊を追う牧羊犬は飼っていたのですが、新たにプロテクトドッグという外からの侵入者を追う犬を飼い始めたんです。彼らは羊を見張ることはせず、常に外からの気配に注意を払っています。見知らぬ動物に対しては猛烈に攻撃をする犬。オートバイの音だったとしても、感じたら飛び出していくんです」
 現在活躍しているのはターキッシュ・カンガールという大型犬18頭。オオカミに負けず劣らず立派な体格だが、フレンドリーで人懐っこい。
「実はこの犬種は家庭で飼うには少し難しくて。運動量が多く、ちょっとしたことで攻撃性が増します。そのせいで飼育放棄されることも多いのですが、ここなら思い切り走れてストレスもなし。彼らの強い警戒心や、いざというときの攻撃性の高さは私たちにとっては心強いんです」
 犬を導入してからオオカミを見たことは一度もないそう。夫妻は新たな侵入者に不安を覚える周辺の農家に繁殖させた犬を譲るなどして、プロテクトドッグの普及を進めている。
「自然は人間が生まれる前からずっとあったもので、オオカミだってその一部。彼らが戻ってきたというのは素晴らしいニュースです。邪魔な存在として排除するのではなく、知恵と工夫で農家を守っていく。そんなやり方で、オオカミと上手に暮らしていけたらと思っているんです」

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photo/
Shinji Minegishi
text/
Yuriko Kobayashi
special thanks/
coordination/Yumiko Urae

本記事は雑誌BRUTUS879号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は879号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.879
心を開放する旅、本、音楽。(2018.10.01発行)

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