タイププロジェクトタイプディレクター鈴木 功(第1回/全4回)
雑誌で、本で、街や家で、暮らしの中で絶えず目にしているたくさんの文字。意味ある言葉を形にして見せる「書体」とは、どのように作られ、選ばれ、使われているのだろうか?
- 漢字、ひらがな、カタカナ、アルファベットから数字まで、生活の中に溢れる無数の文字。この文字は、書体は、どんなふうに作られるんですか?
- 鈴木功
- 僕の代表作とも言える書体が、雑誌『AXIS』のための「AXIS Font」です。32歳で独立してタイププロジェクトで手がけた最初の書体で、何よりも、一つの雑誌のために専用書体を作る、媒体のパーソナリティにぴったりと合うものを作れる、というアプローチに惹かれたのを覚えています。
- 「AXIS Font」は全部で何文字あるんですか?
- 鈴木
- 書体にはスタンダードとプロという、大きく分けて2種類のセットがあって、スタンダードならアルファベットまで含めて1万字弱。プロは1万5000字ほど作る必要があります。さらにウェイトといって、文字の太さのバリエーションもあり、「AXIS Font」の場合は太さが7つあったので、スタンダードだけで7万字近くですね。当時は僕1人だったので、基本の漢字と仮名を作り終えるまで1年以上かかりました。完成して雑誌で使われるようになってからも『AXIS』の誌面を毎号チェックしては調整を加え、修正する、というのを2年間続けました。この微調整はクライアントに頼まれたわけではなかったんですが、実際に誌面で書体を見てみるとモニターで1文字ずつ見ているのとは違って、サイズや文字の組み合わせなどで、どうしても気になる点が出てきてしまう。少しずつ少しずつ調整して、2年後にやっと一般向けにリリースしました。(続く)

タイププロジェクトタイプディレクター
鈴木 功
すずき・いさお/1967年生まれ。アドビシステムズにタイプデザイナーとして勤務後、2001年にタイププロジェクトを設立。オリジナルフォントやコーポレートフォントを開発、提案する。
- photo/
- 角戸菜摘
- text/
- 鳥澤 光
本記事は雑誌BRUTUS878号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は878号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。