生活・スポーツ

「仮装」の伝統を守るメジャーリーガーたち。

生島淳の僕しか知らないアスリートの秘密

No. 878(2018.09.15発行)
LONDON 服の学び場。STYLEBOOK 2018-19 A/W

 メジャーリーグもいよいよ佳境を迎えるが、毎年、シーズン終盤に話題になるのが、新人たちの「仮装」。これは「ルーキー・ヘイジング・デー」と呼ばれ、試合終了後にロッカーに戻ると自分の服がどこかに消え去り、恥ずかしい服がハンガーに掛かっているというわけ。男たちの世界の通過儀礼として、メディアでも取り上げられ、ファンの間でも親しまれてきた。
 これまで日本メジャーリーガーも、田中将大がヒップホップ歌手、ダルビッシュが女性用競泳水着、前田健太がチアリーダー、時代を遡れば、松井秀喜がヒョウ柄の帽子にジャケット、サングラスのド派手な格好で堂々と歩いていたっけ。特に優勝争いから脱落したチームの場合、こうした話題があるとメディアの方もありがたい、という事情もあった。
 ところが、時代が変わった。2016年12月メジャーリーグと選手会が合意した新労使協定の「いじめ禁止」の中に、性別、人種、性的指向、国籍を強調するような差別的な仮装が禁止になったのである。たとえば、定番だったワンダー・ウーマン、フーターズ・ガールといったレパートリーがNG。
この御触れが出たときに、風習が絶滅してしまうのではないかと思われたが、どっこいメジャーリーガーたちはへこたれなかった。おそろいの着ぐるみを作ったりして、クリエイティビティを発揮し、伝統を守ったのである。

いくしま・じゅん/スポーツジャーナリスト。近著に『エディー・ウォーズ』などがある。

illustration/
土車大八

本記事は雑誌BRUTUS878号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は878号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

No.878
LONDON 服の学び場。STYLEBOOK 2018-19 A/W(2018.09.15発行)

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