南方中華料理 南三/香辣里

グルマン温故知新

No. 874(2018.07.17発行)
LIFE IS PARK!

日本ではまだまだ馴染みのない、南方系中華が増殖中!

中国の料理と聞いて思い浮かぶのは、広東料理や四川料理、上海料理などだろう。だが、そのどれにも属さない中国料理店が話題だ。片や湖南雲南台南と大陸&台湾の南部の味をコースで、片や中国南部の湖南料理に特化。この夏、中華は南方がキーワードに。

冷菜盛り合わせ 右上から時計回りに、紹興酒に漬けたよっぱらい海老とサバのプーアル茶スモーク、アヒル塩卵苦瓜炒め、たっぷりのミントと塩漬けレモンで味つけした雲南傣族レモン鶏、カラスミ緑竹和え、焼ナスピーマン・ピータン和え。料理はすべておまかせ5,000円(税込み)のコースから。

珍味盛り合わせ 右から、現地のレシピにもち米を加えもちもち食感をプラスしたウイグルソーセージ、丁寧に下処理した豚の大腸に九条ネギを詰めたパリパリ大腸、数種のスパイスで煮込んでから燻製にするくんせい鴨舌。"

スズキのオーブン焼き発酵パインソース パイナップルと豆麹、塩、米焼酎などで作る台湾の調味料・発酵パイン醤。自家製のこれをソースに使い、オーブン焼きした白身魚と合わせた一品。ソースにはトマトやパクチーも加え、爽やかな味わい。

「9月以降はコースを増やしていきたい」とシェフの水岡さん。

もともとはバーだった路地裏のビル2階の小体な空間。

南方中華料理 南三

四谷三丁目

湖南雲南台南、3つの南にこだわる中国料理

 スパイスを多用する干し肉や、発酵パイン醬を使った魚のオーブン焼き、ミントが香る雲南傣タイ族レモン鶏など、料理は馴染みの少ない味尽くし。しかし店主・水岡孝和さんが生み出す未体験の味を求め、5月オープンの小さな店は、早くも美食家の間で話題となり、連日盛況だ。
 自身の足で中国各地を巡り、特に食文化が濃密で豊かだと感じた、中国南部の湖南ベトナムやタイにほど近い南西部雲南、さらに1年間の語学留学も経験した台湾南部の台南。3つの南にこだわり中国料理を提供するから、店の名は〈南三〉だ。
「現地で味わい、作った人に中国語でその場で作り方を聞き、市場で材料を漁あさり、本屋でレシピを再確認。これが水岡理論」
 料理人は水岡さん一人だが、発酵パイン醬や塩レモンなどの調味料や、肉や魚の燻製を自家製にするこだわりぶり。飽きさせることなく、複雑で多彩な味わいの中華つまみが続々と登場し、つい夢中になってしまう。

臭魚〜季節の白身魚の香辣蒸し 塩水に漬けて発酵させた青森県産黒ソイを一度焼き、唐辛子とともに煮込んだ“発酵中華”を代表する品。テーブルで金属製の器に火を入れながら熱々で味わう。残ったソースは「蒸し白米」300円にかけて味わうと美味。2,300〜3,500円(魚の種類とサイズにより価格が異なる)。写真は3,500円。

キュウリの大葉ロースト 高温、短時間でキュウリをローストし、仕上げに大葉をたっぷりまぜて完成。味つけも塩のみとシンプ

燻製豚三枚肉と葱の炒めもの 皮付き豚の三枚肉を系列店〈羊香ヤンシャン味坊〉の燻煙室で塩漬けにした後、干し肉にし、燻製。完全オリジナルの中国版ベーコンを使い、ネギとニンニクの葉、唐辛子と炒める。辛味の中に旨味たっぷり。1,000円。

北京のホテルで料理長を務めた張鋒ちょうほうシェフ。

三軒茶屋駅前の新築ビルだが、あえて田舎っぽさを残す空間デザインに。

香辣里

●三軒茶屋

発酵、ハーブ、燻製で湖南料理の魅力を発信。

 神田〈味坊〉を筆頭に、中国東北地方の料理で次々とヒットを飛ばす人気店オーナーの梁宝りょうほう璋しょうさん。今回系列5店目となる〈香辣里〉では、知られざる中国南部・湖南の魅力を発信する。
 唐辛子を多用した料理が湖南の特徴の一つだが、味わいをもう一歩分析すると、辛さの先に際立つ特徴が見えてくる。魚や豆腐、唐辛子などを発酵させ旨味を増幅させる“発酵中華”、香菜やミントを多用する“ハーブ中華”、燻製干し肉「腊肉ラーロゥ」に代表される“燻製中華”と、辛さと旨味や香りを巧みに組み合わせることが秀でた特徴だ。
 発酵させた魚を蒸し煮にした名物の「臭魚チョーユゥ」は、唐辛子を多用することで、スカッと突き抜ける辛さの後にじんわりと独特の香りと旨味が広がる。それがまた、中国紅茶を使ったオリジナルのバーボンカクテルなどと絶妙に合うのだ。
 味わえば味わうだけ、発見の連続が楽しい湖南料理。味坊の快進撃はまだまだ続く。

photo/
Naoki Tani
text/
大西健俊

本記事は雑誌BRUTUS874号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は874号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.874
LIFE IS PARK!(2018.07.17発行)

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