世界で活躍する日本人バーテンダーが考えたこれからのバーの形。

BRUTUSCOPE

No. 874(2018.07.17発行)
LIFE IS PARK!
1F ─ Guzzle 南米経由でアメリカに渡った使節団の航路をイメージし、メニューは日本、ニューヨーク、キューバ、ノンアルコールの4部構成。ノーチャージで1杯1,300円~、18時までは子供連れもOK。
B1F ─ Sip 初めて西洋のものを口にした使節団のストーリーにちなんだ「シャンペン&アイスクリーム」をはじめカクテルは12種、1,700円~(サービス料10%)。東京滞在時は後閑さんがカウンターに立つ。

コンセプトからスタイルまで何もかもが新しい。シーンに一石を投じる話題のバーの全貌とは?

 バーの新時代到来を予感させる店が、今年6月、東京渋谷に誕生した。オーナーは2006年ニューヨークへ渡り、12年に『バカルディ レガシー カクテルコンペティション』でアメリカ代表として世界一を獲得した後閑信吾さん。14年、上海にオープンしたバー〈Speak Low〉
は、『Asia's 5‌0 BEST Bars』で3年連続トップ3に選出されている。日本が世界に誇るトップバーテンダー、満を持しての凱旋帰国である。
 クラフトスピリッツが人気を博し、国内の各地にもマイクロディスティラリーが相次いで誕生。洋酒への注目がにわかに高まる今、機運を読んでの出店かと思いきや、後閑さんの真意は別にあった。
「世界一のタイトルだけでは、日本国内では説得力がない。海外で十分な経験、実績を重ねた今だからこそ、伝えられることがあると思ったんです」
 確かに、カクテルブームに沸く欧米香港、シンガポールをはじめとするアジア各国では、トップバーテンダーはスター的存在だが、日本国内ではコアなバー好き、洋酒好きしかその存在を知らない。
日本のバー文化は、世界の中でも特異。例えばニューヨークで、“バーに行ったことがない人”は“酒を飲まない人”。でも日本では酒を飲む人の中でバーに行く習慣があるのはごく一部ですよね」 
 メニューがない店が多く酒の知識がないとオーダーできない。カバーチャージがあり、価格が高い分、気軽に行けない。これが、日本のバーの現状だ。
「バーはもっと多くの人に開かれた場所であるべき。わいわい会話しながら、楽しく酒を飲める、真にパブリックな場所を作りたいんです」
 前置きが長くなったが、後閑さんがオープンした渋谷〈The SG Club〉の紹介をしよう。コンセプトは「1860年、江戸幕府からアメリカに派遣された遣米使節団が日本に帰国し開いたバー」。インテリアには障子や畳、着物の染型などから着想を得たデザインが至るところに。日本酒のワンカップや居酒屋のサワーをイメージしたカクテルメニューが用意されていて、バーに馴染みがない人も親しみやすい。「日米のハイブリッドは、自分のキャリアそのもの」と話すが、グローバルなバーほど土地固有の文化を発信するのは、世界的な潮流だ。もちろんカクテルにはフレッシュフルーツやハーブ、コールドブリューティーやコーヒーなど吟味を重ねた素材が使われ、トップバーテンダーならではの発想でひとひねりある形で提供される。
 店内は「がぶがぶ」を意味する1階の〈Guzzle〉、「ちびちび」を意味する地下1階の〈Sip〉と、2つのパーツに分かれていて、異なるメニューが用意されている。〈Guzzle〉にはテイクアウトカウンター〈Street Guzzle〉を、〈Sip〉には靴磨きサービスを行う〈Sip&Shine〉を併設するというのも前代未聞だ。まだ開業したばかりだが、国内外のフーディやバーホッパーなど、これまでのバーの客とは異なる層で賑わっているのも特筆すべき点。東京のバーのこれからの10年を占う一軒になることは間違いない。

ナンバーワンカップ1,200円。スタンダードカクテル「ピムスナンバーワンカップ」のツイスト。日本酒を使いカップ酒を模したオリジナルのグラスで。〈Guzzle〉の一品。

The SG Club
上海の〈Speak Low〉〈Sober Company〉に続き、後閑信吾さんが手がけるバーの第3弾。カジュアルな〈Guzzle〉とゆっくりとカクテルを楽しむ〈Sip〉から成る。2つの頭文字を取った店名は、後閑さんのイニシャルに同じ。加えて「Samurai&Gang」という意味も掛け合わせている。インテリアは〈ザ ホールデザイン〉の杉山敦彦氏が手がけた。●東京都渋谷区神南1−7−8☎03・6427・0204。月曜〜木曜14時~翌2時、金曜14時〜翌3時、土曜12時〜翌3時、日曜12時〜24時(B1F 18時~)。無休。

photo/
Shinichi Yokoyama
text/
Kei Sasaki

本記事は雑誌BRUTUS874号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は874号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

No.874
LIFE IS PARK!(2018.07.17発行)

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