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活版印刷のスタートは、活字を拾う〝文撰〟から。

本を作る人。

No. 872(2018.06.15発行)
新・珍奇植物

FUP—ファースト ユニバーサル プレス代表 溪山丈介

活字で組版を作って印刷する活版印刷は、活字を一つずつ拾うところから始まる。“文撰”と呼ばれるこの作業は、長年の実務によって編み出された形式を守る、効率重視の職人の世界だ。

この工房には、一体どれくらい活字があるんですか?
溪山丈介 
1書体1サイズで、かなカナ漢字だけで7000〜1万2000種ないと本は刷れないといわれます。1本の活字は基本的に1度ずつしか使わないので、同じものが何百、何千本並んでいるというわけです。
印刷する活字はどんなふうに拾っていくんですか?
溪山 
片手に原稿、片手に文撰箱という小さな木箱を持って棚の前に立ち、一文字ずつ拾う作業を“文撰”と呼びます。印刷会社によって呼び方などの違いはあるのですが、活字は、一番よく使うグループが袖、続けて大出張、小出張、泥棒、A外字、B外字と6カテゴリーに分かれていて、一番取りやすい場所にひらがな、続いて袖から順に配置されています。
活字の配置を体で覚えて拾う、まさに職人の世界ですね。
溪山 
一人前の文撰職人になるには最低2年は必要。新人は後ろに立つベテランから、時折パカンと頭をはたかれながら体で覚えていたそうです。活版印刷が普及していた時代のプロは、1日8〜9時間で1万字を拾っていたとか。僕自身は名刺やハガキ程度でいやんなっちゃうんで、書籍はプロに依頼しているんですが、現役の文撰職人は若い方でも70代後半。伝統芸能かっていう世界なんです。(続く)

たにやま・じょうすけ/1968年生まれ。音楽の仕事などを経て〈内外文字印刷〉に勤める。2013年にFUP|ファーストユニバーサルプレスを設立。書籍の活版印刷を請け負う稀少な存在に。

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photo/
角戸菜摘
text/
鳥澤 光

本記事は雑誌BRUTUS872号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は872号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.872
新・珍奇植物(2018.06.15発行)

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