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ネタ帳は、稲作でいうと苗床みたいなものなんです。|東海林さだお

TOKYO80s

No. 872(2018.06.15発行)
新・珍奇植物
PHOTO / SHINGO WAKAGI

東海林さだお(第四回/全四回)

 今は漫画と劇画が一緒になってるけど、僕の場合は漫画です、純粋な。だから漫画と文章ですね。文章の方は、昔は漫画家にルポをやらせることが結構あったんです。絵も描けるし。最初はそんなことで依頼があって増えていった。お肉屋さんのコロッケみたいなものです、おまけ(笑)。『漫画読本』で連載が始まり、それが『オール讀物』に移って、50年以上。始まると終わらない、全部2000回とかね。最初に僕を担当した編集さん、だいたい僕の担当は新入社員で、そういう人たちは定年になって、とっくにいなくなっちゃった。副社長になった人もいるし。本当にその人の一生を見てた感じです。『あれも食いたい これも食いたい』が1987年スタートで、毎日新聞の『アサッテ君』が74年から。新聞の連載期間は、よく耐え抜いたと思います。必ず1日1個締め切りがあり、プラスで何か。漫画家は新聞をやると、それ一本って人が多いけれど、僕の場合は新聞と週刊誌3本、月刊誌1本をやって四十数年。自分で自分を経営する感覚ですね。よく病気もしないで、やってこられたなと。毎日新聞が終わって2年目に肝臓をやってね。緊張がとれたのかな。今の生活が漫画家として正常で、それまでがいかに異常だったか。ネタ帳を作って、それを基に描くんです。651冊目かな。時事ネタや気になったことを絵にしてアイデアを書きつけて。また2、3日して、次に浮かんだアイデアを付け加える。全部とってあります。すべて絵にしておくのが大事。お米を作るのに、種をまいて苗にして、田植えをして生長を待って刈り取るでしょ、これはまさに苗床。少しずつ育てて、締め切り当日に刈り取るんです。今後やりたいことは、もうなくなりました。先も短いし、今さら新しいことも(笑)。ただ、今の仕事の質を向上させる意欲はありますね。今までの人生を振り返ると、田舎でワラジを履いて学校に行ってた頃は、漫画界の中央で生きていくなんて思わなくて、漫画界の周辺で生きていく漫画家になると思っていました。大都会で自分が通用するはずがないって。だからうまくいったなあ、という気持ちです(笑)。よくこれで食えたなあって。きっと諦めなかったからでしょうね。それと後がないということ。ダメだったらサラリーマンでいいやとか、なかったから。これにすがるしかないってのが、あったんだと思いますね。(了)

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東海林さだお(最終回/全四回)
しょうじ・さだお/漫画家。『あれも食いたい これも食いたい』『タンマ君』ほか連載中。

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photo/
SHINGO WAKAGI
text/
KUNICHI NOMURA
edit/
HITOSHI MATSUO

本記事は雑誌BRUTUS872号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は872号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.872
新・珍奇植物(2018.06.15発行)

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