TEST KITCHEN H/TXOKO

グルマン温故知新

No. 871(2018.06.01発行)
CAMPとHIKE 頼れる道具

厨房での時間を共にした師弟が、ほぼ同時期に新店を。

イタ飯ブームの立役者であり、日本イタリア料理界に影響を与えてきた山田宏巳シェフ。山田シェフの下で10年以上料理長として厨房を支えた関口晴朗シェフ。師弟関係の2人がこの春それぞれ出店。見え隠れするイズムと個性はぜひ、味比べで体感してほしい。

ボリートミスト イタリア版おでんといわれる肉と野菜の煮込み。この日は宮崎県産和牛のタンと頬肉を使用。タマネギは京都・丹後半島から取り寄せ、ニンジンは那須の渡辺農園からと野菜にこだわり、素材と塩と水で煮込むだけで驚くほど深い味に。料理はすべておまかせ5,800円のコースより。

真鯛とそら豆のパスタ サルデーニャ産カラスミを添えて イタリア産のセモリナ粉を使ったスパゲッティーニ。淡路産マダイをさっと湯がき小さく刻み、空豆とアーリオオーリオに。仕上げにカラスミをたっぷりかけて完成。

漢方三元豚の自家製焼きたてハム 山田シェフが惚れ込んだという自家製ハムの名店、山形〈イルコテキーノ〉にスタッフの一人が弟子入りしハム造りを学ぶ。漢方三元豚を使ったボンレスハムは提供前にオーブンでパリッと焼き、温かいうちに提供する。

専用ワゴンで客席前でボリートミストを取り分ける山田シェフ。

骨董通りの路地裏、260坪の敷地に柱が一本もない大空間を設計。

TEST KITCHEN H

表参道

オオバコで味わう、イタリアンの醍醐味。

 1980年代、いち早くイタリア本国での料理修業を経験し、85年フルオープンキッチンの伝説のイタリアン〈バスタパスタ〉の初代料理長に就任。その後も〈リストランテ・ヒロ 青山〉や〈ヒロソフィー〉など、日本イタリア料理界を常に牽引し続けてきた山田宏巳シェフ。
〈TEST KITCHEN H〉では、冷たいトマトのカッペリーニあり、かき氷ありとシェフのスペシャリテのヒットパレードはもちろん、さまざまなシェフとのコラボやイベントを開催し、実験の場にしていきたいと意気込む。要は、経験を経たからこそ表現できる楽しいイタリアンへの原点回帰こそが店の主題だ。
 小箱全盛の業界に一石を投じる大箱空間はかつての〈バスタパスタ〉を彷彿させるオープンキッチン。5,800円〜というコースも魅力で、客席を回ってワゴンで肉を取り分けるなど、ワクワクする演出も多数。レストランとは元来そういう場所、巨匠の集大成は実に明るく楽しい。

フルーツトマト、ウニ、アスパラガスの冷製サラダ 素材の味の輪郭がはっきりしているという理由でグリーンアスパラはイタリア産、ホワイトとアスパラソバージュはフランス産を空輸。礼文島のウニ、高知産フルーツトマトと合わせてサラダに。天草の岩塩とオリーブオイル、若干のハーブのみで味つけ。料理はすべておまかせ12,000円のコースより。

ブッラータチーズと清水さんのグリーンピース グリーンピースのさやでだしを取り、そのだしで豆を塩ゆでしピュレに、イタリア・プーリア州のブッラータチーズと合わせて味わう。グリーンピースは横浜の農家・清水賢人さんより直送。飾りの茎や花も美味。

バスクのチーズケーキ シェフの関口さんが修業時代にスペイン・サンセバスチャンのバルで味わった味を自己流で再現。生クリームとクリームチーズ、少量の小麦粉を使い、約1時間をかけて焼き上げる。スフレのような軟らかい食感が印象的。

「地元の人にも愛される店にしていきたい」とシェフの関口さん。

延べ100軒近くの物件を内見し、巡り合ったという空間。

TXOKO

●江戸川橋

巨匠の下と名店を渡り歩き、辿り着いた自然の味。

 90年代当時、飛ぶ鳥を落とす勢いだった〈リストランテ・ヒロ 青山〉の山田宏巳シェフに師事。その後、イタリアで2年、スペイン・サンセバスチャン〈ムガリッツ〉で2年半腕を磨いた関口晴朗さん。帰国後〈ヒロ〉に戻り、山田シェフの右腕として11年、共に歩んできた。
 現在43歳。脂ののった料理人となった関口さんが一念発起し、江戸川橋で独立した。
「すべてがあって今の料理があります」と差し出されたのは、極めてシンプルな皿の数々。塩だけで調味したグリーンピースに、春の山菜・シドケのみのパスタ、飾り気のないチーズケーキと、一見質素にも見える料理にこそ、実は丁寧な仕事が潜む。
 グリーンピースはさやで取っただしで豆を湯がき、チーズケーキはスフレのように火加減を微調整。素材の輪郭を際立たせるべく、手は加えているけど、どこまでもナチュラルな味。飾らない氏の人柄と美味への追求はそのまま料理で表現される。

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photo/
Keiko Nakajima
text/
大西健俊

本記事は雑誌BRUTUS871号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は871号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.871
CAMPとHIKE 頼れる道具(2018.06.01発行)

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