エンターテインメント

原画の力を立ち上げる技術。

本を作る人。

No. 870(2018.05.15発行)
新 お金の、答え。
凸版印刷プリンティングディレクター 富岡 隆
写真データを切り抜き、黒の背景と合わせて構成した『特別展運慶』図録。
オペレーターと一対一で画像に向かい、細かく緻密な修正を加えていく。

シアン、マゼンタ、イエローとブラック。基本となる4色の小さな点が配置されて、絵や写真や文字が紙の上に姿を現す。100分の1レベルの微細な調整から生まれる、印刷物の美しさの話。

印刷は色の集まり。最大の難関は黒と白にあり。

──『復刻版 絵草紙 うろつき夜太』を作られる際は、どんなやりとりをされたんですか?
富岡隆 この作品は元が週刊連載でしたから、横尾忠則さんからは「ここをもうちょっと作り込みたい」「これもしてみたい」
とアイデアが次々出てきました。それを加味しているという意味では、これは復刻版であり最新版でもあるんです。
──原本を忠実に再現するだけではないんですね。
富岡 作家さん本人と一緒に作るので、オリジナルそのままである必要がなかったんですね。横尾さんは、ご自分が持っているものだけでやっても広がらない、面白くない、と考える方なので、色の調子を大きく変えてみたりずらしてみたり、こちらの主観を反映した提案をすることもよくありました。
──フルカラー印刷で、特に表現が難しい色はありますか?
富岡 黒と白です。『特別展運慶』の図録では仏像の背景に黒を敷いているんですが、黒って黒ければ黒いほど綺麗なんです。そのベストの黒を探し出して数値を設定し、さて8ページ、16ページ分を刷ってみると、今度は手前と奥で濃淡が出たりする。黒は均等に、揃えて刷るのが難しいです。白の場合は、そもそも青、赤、黄、黒の点を多く打つことができないし、白の中で差を出すことの難しさがある。
淡い色は光と影のように濃淡だけで差を作るイメージなので、水彩画の印刷などはかなり苦労します。そんなふうに細かく調整を続けて、原画や原稿が持つ力を立ち上げるベストの印刷を実現するのが私の仕事です。(了)

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富岡
とみおか・たかし/1972年生まれ。高校卒業後、91年に凸版印刷に入社。以降、製版現場に身を置き続け27年。硬派な日本画集からヌード写真集まで、これまで手がけた作品は2,000冊以上。

photo/
角戸菜摘
text/
鳥澤 光

本記事は雑誌BRUTUS870号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は870号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.870
新 お金の、答え。(2018.05.15発行)

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