エンターテインメント

あるわ、あるわ、変態タイトルが続々。

滝本誠のCAFÉ NOIR

No. 869(2018.05.01発行)
居住空間学2018 歴史をつなげる部屋。

 一昨年、駐日アイスランド大使館後援で、ドキュメンタリー『最後の1本』が公開された。最後の1本、は死ぬ間際の煙草でもなく、有名監督の最後の映画というわけでもない。副題にこうあったからだ。『〜ペニス博物館の珍コレクション〜』。哺乳類のペニスをことごとく収集した私設博物館にないものはただひとつ、ニンゲンのそれであった、そこで最後の1本として……。
 江戸春画のとてつもない誇張によって、日本人のペニス・サイズはこれまで国際的緊張を漲らせてきたわけだが、サイズはともかくとして、古からの奇習において、日本は他国に恥じることのないペニスの充血をみせてきた。これはまちがいない。春でもあるし、そんなことをあれやこれや考えながら、とある古書店によろよろと入った。そのとき、和綴じで製本されたオレンジ色の一書が目に入ったのである。かろうじて『変態崇拝史』とよめたわけだが、変態崇拝とはなにか? 変態を崇拝するのか? そしてその歴史とは? これは無視できない。おそるおそる開くと口絵はカラー印刷の江戸浅草の風物詩の一場面。巨大ペニスを装着のなにものかが、通りを歩く娘たちに、現在でいえば、なまはげ感覚で楽しくちょっかい、かい探し。画面からは装着法がわからないので、おそらく背中に装着の巨大ペニスがそれ自体生きもののように生々しい。そこがポイント・アップ。
 まさに崇高、崇敬行事のはずで、これは変態ではあるまい。なぜ、変態? と平台を見ると、変態本は単に一書にとどまらなかった。重なって、あるわ、あるわで、変態タイトルが続々、そもそもの叢書タイトルが「変態十二史」
 さて、変態シリーズの発行所はとみると文藝資料研究会、刊行年は大正末期から昭和にかけてである。〈変態〉は、一種の当時最高にクールなアイ・キャッチ?で、購入を決めたのは、当時の前衛チャンピオンの一人=村山知義の『変態藝術史』が第二巻としてあったからだ。これは、E・フックスほかのエッセンス訳で、結局、面白いのは、先の『変態崇拝史』『変態広告史』、最高なのが『変態見世物史』だろうか。あくまで図版判断。

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たきもと・まこと/東京藝術大学卒業後、編集者に。近著に『映画の乳首、絵画の腓 AC 2017』(幻戯書房)

本記事は雑誌BRUTUS869号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は869号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.869
居住空間学2018 歴史をつなげる部屋。(2018.05.01発行)

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