映画

山㟢努が、"生きるよろこび"を描いた画家・熊谷守一を演じる。

BRUTUSCOPE

No. 869(2018.05.01発行)
居住空間学2018 歴史をつなげる部屋。
山㟢 努 (左)、戌井昭人 (右)
『俳優・亀岡拓次』で出会った2人が語る、「モリカズ」のこと、「演じる」こと、そしてやっぱり「亀岡」のこと。
山㟢努 2日ほど前から『俳優・亀岡拓次』を読み直してたんだよ。やっぱり面白いね。
戌井昭人 ありがとうございます。出会いは『亀岡』でしたね。週刊文春での書評で『亀岡』について書いてくださって。その後雑誌で、僕がいろんな人と対談する連載が始まって、初回の相手を誰にしようか考えた時に、山㟢さんしかいない と。それが初対面。
山㟢 2回目は『亀岡』の映画の撮影で長野に行った時か。夜中まで待たされたよな。
戌井 大変な現場でしたね(笑)。本題ですが、『モリのいる場所』面白かったです。モリカズさん(熊谷守一)の周りが、みんな楽しそうでよかったですね。見ていて楽しくなりました。山㟢さんがモリカズさんのことを知ったのはだいぶ前なんでしたっけ?
山㟢 彼の作品に出会ったのは、たぶん20年くらい前なんじゃないかな。たまたま本屋で画集を見つけて、名前は知ってたから手にとってパラパラ見たら、とても素敵だった。それから画集を集め始めたんだよ。
戌井 山㟢さん自身、モリカズさんに共感する部分が多いんですか?
山㟢 多かったね。とにかく大好きで憧れだったんです。だからこの映画は、とってもやりにくかった。だいたい僕は、演じる人の欠点や歪みのようなところをとっかかりにして役に入っていくタイプなんです。だけど今回は自分の好きな人だったから、目がくらみました。なかなか歪みが発見できなくて。
戌井 なるほど。
山㟢 あなたはどうやって役作りするの?
戌井 いやいや、僕はもう、せりふを覚えて大きな声を出すだけです。せりふはちゃんと覚えていくんですが、本番は緊張して迷惑をかけてしまう……。今後、せりふがある役は断ろうと思います(笑)。
山㟢 亀岡さんとはだいぶ違うね(笑)。彼は現実の世界と虚構の世界が地続きでしょ。スタスタ〜っと撮影現場に入っていって、アドリブで芝居しちゃう。アドリブの世界ってやっぱり魅力的なんだよね。僕らよりちょっと上の世代の俳優は、とにかくせりふが絶対。せりふや、台本に書かれている「……」の意味なんかも間違えちゃいけない世界だった。
戌井 僕も少しだけ文学座にいたことがあるんですが、それが耐えられなかったんです。
山㟢 作家の書いたものが正解で、俳優はその正解を求めて励む。でも、僕らの世代くらいから、それがだんだん窮屈に感じるようになってきた気がするね。……いやぁ、本当に亀岡の話をするとキリがなくて。
戌井 光栄ですが本題に戻して……(笑)、『モリのいる場所』、食べ物が本当においしそうでした。紙に包まれた肉や、ソーセージにカレーうどん。
山㟢 やっぱり活字や映像になると、食べ物ってすごく力があると感じるね。『亀岡』でもブロッコリーやカツ丼、コロッケが本当に旨そうで。ブロッコリーあんまり好きじゃなかったのに、積極的に食べるようになったよ。……ってまた亀岡の話だ。しかし、亀岡が老優になったらどんな感じなんだろう。
戌井 この映画に出ているとしたら、間違いなくきたろうさんの役ですね。
山㟢 ははは。間違いないね。

『モリのいる場所』
監督・脚本:沖田修一/出演:山﨑努、樹木希林、加瀬亮、吉村界人、光石研ほか/山﨑努が「僕のアイドル」と語る画家、熊谷守一を演じる。描かれるのは、1974年のある夏の一日。5月19日、シネスイッチ銀座、ユーロスペース、シネ・リーブル池袋、イオンシネマほかで全国公開。
©2018「モリのいる場所」製作委員会

photo/
Akiko Mizuno
text/
Miki Miyahara

本記事は雑誌BRUTUS869号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は869号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

No.869
居住空間学2018 歴史をつなげる部屋。(2018.05.01発行)

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