美術

かわいいだけじゃない世界にある、無限のストーリー。

BRUTUSCOPE

No. 869(2018.05.01発行)
居住空間学2018 歴史をつなげる部屋。
同じものは二つとない、世界に一つだけの作品たち。表情や動きがそれぞれ異なるその姿は、命を持つ人間や動物と同じ。「運命の子に出会ってしまった……」。そんな感覚を大切にしたいから、実際に作品を見てほしいと中村さんは語る。奇跡のような出会いを求めて、展覧会に足を運びたい。

アーティスト・〈banryoku〉(中村万緑子)初の作品集発売。

 中村万緑子さんが作り出す作品は、布や様々な素材を使って、見たこともない世界を見せてくれる。かわいらしい人形やパペットのほかにも、心が躍るような服、ちょっと不思議なカバンなど、作品は多岐にわたる。そんな〈banryoku〉(中村万緑子)
初の作品集『The worth of worth
less things』は、昨年行われた
個展の作品を、写真家森本菜穂子さんが撮り下ろしたもの。banryokuが生み出す、とびきりのユーモアやセンスに惹かれた編集者、デザイナー、写真家が集い、その世界観を表現した。
「取るに足らないものたちの力や価値」という想いを込めて作品集には『The worth of worthless things』というタイトルがつけられた。
 中村さんは、幼少期から絵を描くことが好きで、高校卒業後は美術学校で絵画を学んだ。就職後、自分の手を動かしてもの作りをしたいという思いに駆られ、ずっと憧れだったスウェーデンの学校に進学することを決めたという。授業を通して、織りや染め、プリントなど平面制作のほか、立体制作の楽しさに気づき、人形や洋服など自らの手で生み出していく道を選んだ。
 banryokuのもの作りは、偶発的だ。プランニング、スケッチという手順は踏まない。手と脳を動かしていて、自然と生まれる作品たち。それは一つ一つが個性を持つ一点もの。今にも動きだしそうな、憂いのある表情の作品たちは、この世にただ一つ。見つめていると、彼らのストーリーが自分の中に生まれてくるのを感じる。
 出版を記念して、5月12日からは展覧会も行われ、作品集に収録した写真のオリジナルプリントや、現在鋭意制作中だという新作も披露される。banryokuの独特の世界に、心ゆくまで浸りたい。

banryoku 1st book『The worth of worthless things』
banryoku(中村万緑子)の、自身初となる作品集。写真は、banryokuの作品のファンでもある写真家森本菜穂子が手がける。5月12日〜22日(12時〜22時)、ホームスパン ショールーム(東京都渋谷区富ヶ谷1−16−3)で行われる出版記念展示会で先行発売。その後、全国の書店や国外でも販売を予定している。2,800円。800部限定。展覧会では新作も展示される。

photo/
Nahoko Morimoto
text/
Miki Miyahara

本記事は雑誌BRUTUS869号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は869号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.869
居住空間学2018 歴史をつなげる部屋。(2018.05.01発行)

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