建築・インテリア

暮らしの実験から始まった、成長する家。

住み継がれる、半世紀住宅。

No. 869(2018.05.01発行)
居住空間学2018 歴史をつなげる部屋。
コンクリート打ち放しに黒いサッシ。幾何学的なフレームが、ケース・スタディ・ハウスの名作〈イームズハウス〉を彷彿とさせる。60年前に生まれた実験住宅は今も現役だ。
居間から庭を見る。コンクリート打ち放しの壁は無垢材で覆われ、サンルームを増築。施主一族の中で住人がたびたび入れ替わり、その都度手が加えられ、成長を続けている。
ダイニングキッチン。階段の手すりは近年、生活に合わせて付加。手前は施主の石津謙介が創立に関わったアルフレックスのテーブル。
長尺の無垢材の壁面は1962年の改修で大工棟梁の田中文男が施工。田中文男は数多くの歴史的建造物の調査・修復に携わった名棟梁だ。
北側の開口部は、1960年代に改築。熱環境などを安定させるため窓は下半分をふさぎ、既存の扉が開閉しづらかった玄関を外部に増築。
階段。石津謙介のコレクションだった岡本太郎の絵も並ぶ。踏み板は端部に支えがない造りで、近年加えた手すりは補強も兼ねる。
2階。トイレに建具による間仕切りがないのは、竣工当時そのまま。正面扉の向こうは19 60年代の増築エリアへとつながる。
勝手口。スチールの扉は既存のものを今も使用。キッチンの配置はそのまま、高さを変えたり設備を新しいものに更新したりしている。
2006年増築のサンルーム。トップライトで明るく、インテリアは黒を基調とするアジアンテイストに祥介さんの妻が整えた。
1960年代に増築した2階。この頃の増改築は宮脇檀が設計し、田中文男が施工。石津謙介は宮脇の初期クライアントでもあった。
ヒノキで仕上げられた2階寝室。板目の美しい大きな建具は田中文男のさすがの仕事だが「大きすぎて、開閉が大変」とのこと。
1960年代に増築された玄関ホール。既存の建物と調和する幾何学的な空間だ。黒いキャビネットはアルフレックスの50年物。

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石津邸
●東京都新宿区
設計:池辺陽。1957年竣工。敷地面積108.3㎡。竣工当時は床面積64.4㎡、鉄筋コンクリート造2階建て。下の図面は竣工時のもので、1960年代に宮脇檀の設計で2階屋上物干し部分に寝室などを増改築、祥介さんが住み継いだ2006年に庭にサンルームなどを設けた。

●設計した人
池辺 陽
いけべ・きよし/1920年生まれ。東京帝国大学、坂倉建築研究所を経て、東京大学で教鞭を執る傍ら設計活動を行う。清家清、広瀬鎌二らと共に戦後の住宅問題を解決する小住宅を発表。住宅建設の効率化を目指し、工業化やモデュール研究も積極的に行う。1979年没。

●住んでいる人
石津祥介
いしづ・しょうすけ/1935年生まれ。ファッションデザイナー、ディレクター。石津事務所代表取締役。VANの創業者石津謙介の長男で、その右腕として事業などを支えた。現在はアパレルブランディングや、衣・食・住に伴う企画ディレクション業務を行う。

photo/
Satoshi Nagare
text/
Katsura Hiratsuka
edit/
Tami Okano

本記事は雑誌BRUTUS869号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は869号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

No.869
居住空間学2018 歴史をつなげる部屋。(2018.05.01発行)

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