セルフビルドで変化し続ける、広大な森の中の住まい。

歴史をつなげる部屋。

No. 869(2018.05.01発行)
居住空間学2018 歴史をつなげる部屋。
鳥取県西伯郡、伯耆町の森の中。2013年からここに住む谷本大輔さん、オライビさんの家は家族の手による完全セルフビルド。現在はHUT SBALCO design(以降ヒュッテ)と呼ばれている家族の集会所のほか、敷地内に、住居棟や音楽小屋などが点在する。
自生のナラの木に囲われるように立つ、ヒュッテの南側外観。ガラス店から譲り受けた不揃いの窓のパッチワークが可愛らしい。ロングテーブルを備えたデッキは全長約10m。
ヒュッテ内部。正面のキッチンがこの家の始まりで増改築を繰り返すこと5年。カウンターを新たに造り付けこの春から息子の空南くんの〈ANAN coffee〉としても営業している。
2015年に建てた住居棟。建物の構造は、かつて使っていた北欧メーカーのテントを参考にしている。ドアはインドの手彫り。冬も暖かく過ごせるよう、中央に薪ストーブがある。
住居棟の内部。奥行き約10m、70㎡ほどの一室空間で、間仕切りはなく、低いキャビネットの向こうに寝室コーナーがある。衣類はベッド横のハンガーパイプに収まる分だけ。
ヒュッテを挟んで住居棟の反対側に立つ空南邸。建坪は小さいが天井を高くとりロフトも設けた。基礎は大輔さんの、建て方は友人の手も借りたが、基本は15歳のセルフビルド。
空南邸の内部。インフラを通していないので、水は汲んできたものをタンクに入れて使用。照明は灯油ランタン。わずかな生活道具だけで、驚くほどコンパクトに暮らしている。
ヒュッテ内部。無垢の柱までが初期の頃の家の大きさで、写真手前のスペースは、かつて土間だった。イベントや友人知人との食事会など、突発的なイベントの開催に合わせて、柔軟に、増築・改築を行ってきた。
壁の傾斜を活用した食器棚が使いやすそうな住居棟のキッチン。ラグはアフガニスタンの古いキャメルバッグ。床は杉の破風板。キッチンカウンターは廃校になった小学校の元工作台に脚を付けた。
住居棟の窓辺に置いた木の机は、東京から持ってきた数少ない家具の一つ。ものに対する執着が少なく、できるだけシンプルに暮らしたいというのが家族共通の願いだった。
いくつもの打楽器が並ぶ音楽小屋内部。音楽家であるオライビさんの活動拠点だ。打楽器やカリンバ、そして言葉に頼らない深く温かな声で奏でる彼女の音楽は、森によく似合う。
ヒュッテのデッキ側に増築した、空南くんの焙煎ルーム。焙煎の基本は、丹波篠山の〈DNFコーヒースタジオ〉で教わったが、その後は独学。三河の黒七輪を使い、炭火で焙煎する。
敷地内を通る町道から、ゲートを正面に左に住居棟、右に音楽小屋を見る。かつて大山の別荘地として開発されかけた土地で、結局手つかずのまま、40年近く放置され、森に還った。

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谷本大輔、OLAibi
●SBALCO design、音楽家

鳥取県西伯郡

たにもと・だいすけ、オライビ
写真右から、オライビさん、大輔さん、息子の空南くん、〈ANAN coffee〉を共に営む碩さん。オライビさんは音楽家として国内外で活動。ソロアルバム『みみはわす』を2017年リリース。大輔さんは〈SBALCO design〉主宰。http://sbalcodesign.com

photo/
Keisuke Fukamizu
text/
Tami Okano

本記事は雑誌BRUTUS869号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は869号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

No.869
居住空間学2018 歴史をつなげる部屋。(2018.05.01発行)

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