エンターテインメント

菅原 敏「詩人と暮らし」

No. 860(2017.12.01発行)
日本一の「手みやげ」はこれだ!

おじいちゃんが女をくどく
箸でページをめくりながら

おじいちゃんが女をくどく
そんな詩集 まるで読書感想文だなと

おじいちゃんが女をくどく
工場の娘たちに愛を囁き

おじいちゃんが女をくどく
終戦後に実家の金を持ち逃げして

おじいちゃんが女をくどく
魚の匂いに猫が集まる屋敷の片隅で

おじいちゃんが女をくどく
散々妻を泣かせながら

おじいちゃんが女をくどく
老いた妻をいたわりながら

おじいちゃんが女をくどく
枯れたすすきの火葬場で

乾いた珊瑚になった後でも

memo】家業を営む祖母の家に婿に入り「俺の一生は戦争に翻弄された」と口癖のように言いながら、工場の娘たちに手を出したり、愚連隊に出入りしたりと散々迷惑かけつつも、ふわふわ自由に生きた祖父。詩を書き、ピアノを弾き、子供の誕生日には詩を贈る。よく行った新宿伊勢丹では「お車ですか?」の問いに「ヘリコプターで来たよ」と軽口を叩き、いつも女性を笑わせようとする人だった。今では乾いた珊瑚になってしまった彼を思う12月。(敏)

エンターテインメントカテゴリの記事をもっと読む

すがわら・びん/詩人。新詩集『かのひと 超訳 世界恋愛詩集』(東京新聞)が発売中。GINZAwebのお悩み相談も好評連載中。

edit/
西野入智紗

本記事は雑誌BRUTUS860号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は860号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.860
日本一の「手みやげ」はこれだ!(2017.12.01発行)

関連記事