エンターテインメント

ペティボン挿画入り、魅惑のトンプスン本。

滝本誠のCAFÉ NOIR

No. 851(2017.07.15発行)
台湾で見る、買う、食べる、101のこと。

 やはり、巻き込まれてしまいました。ユーモア、そしてヴァイオレンスふんだんの魅力的な奈落=ツイン・ピークスの滝に……。仕方ないですね、こうなったら身をゆだねるしか対処のしようがないですね。
ツイン・ピークス』3シーズン、エピソード3、ある奇怪な機械が打ち出す番号3という、言ってみれば666÷2=333というべき3並びの救済者を演じるのが、われらが裕木奈江3なのです。すばらしい。学生実験映画のようなグタグタ体裁の映像処理が、こ、これは何だ、となること必定です。言われなければ、いや言われても彼女とはわかりません。
 その昔、扶桑社文庫から出てベストセラーとなった『ツイン・ピークス ローラの日記』が、版元チェンジ、角川文庫で復刊されることになりました。すっかり忘れていましたが、自分が解説を書いていたのですね。ちょっと加筆をしていただければ、といわれて思い出しました。おじいちゃん、いまいくつ? めんどく歳だよ。さっき散歩中にすれちがった小学生の会話から拾ったばかりの年齢与太のように、加筆なんてめんどく歳なと、まちがって全編あたらしい与太文を書き下ろしてしまいました。
 ツイン・ピークスの急な割り込みにもめげず、進行中のいくつかの案件を停滞させるわけにはまいりません。半年前のブルータス読書号でのトンプスン小特集は、出版各界に波紋を投げたようで、その波紋と共振するかたちで、新たな〈ジム・トンプスン〉未訳小説の出版ウエイヴがこの秋、出版界で表面化しますが、ここでは、2010年に、アートとトンプスンの激突として話題を集めた1冊の本を紹介して、前哨戦といたしましょう。
 それが、具象画の先鋭、レイモンド・ペティボンが圧倒的な画力(彼の場合、油絵とかではなく、黒インクに筆というドローイング・スタイル)で挿画挑戦が、トンプスン21歳の時の、パイプライン建設従事の日々を描く『South of Heaven(天国の南)』
です。サンフランシスコの限定本出版社アリオン・プレス刊。

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たきもと・まこと/東京藝術大学卒業後、編集者に。近著に『映画の乳首、絵画の腓 AC 2017』(幻戯書房)。

本記事は雑誌BRUTUS851号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は851号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.851
台湾で見る、買う、食べる、101のこと。(2017.07.15発行)

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