焼肉ケニヤ/Spice Bar コザブロ

グルマン温故知新

No. 850(2017.06.30発行)
建築を楽しむ教科書

刺激的な味わいに、気がつけば杯が進む進む。

刺激の中に、香りや旨味、コクを宿すスパイスを巧みに使い、お酒と楽しませる店が生まれた。片や南インドをベースにしたスパイスバル。片や、アフリカ中東のスパイスを織り交ぜて独自の味を追求する焼肉。一度味わうとまた食べたくなる中毒性に、要注意。

ミックス特製スパイスホルモン 右から時計回りに、シマチョウ、ハチノス、ミノサンド、ハツ、ミノ、最後に皿の中央にレバー。仕入れによりホルモンの種類は替わるが常時4〜6種のホルモンを11種類の香辛料を混ぜ込んだ自家製スパイスで味つけ。フレッシュバジルがアクセントで爽やかさをプラスする。1,900円。

仔羊モモ肉 チュニジアスパイス ローズマリーやタイムと一緒にマリネした仔羊のモモ肉は旨味を凝縮。その焼き上がった仔羊を2種の特製スパイスにつけ味わう。粗挽きはクミンやコリアンダーベース、細挽きはシナモン香るマイルドな味わい。1,800円。

南インドのおふくろの味カレー このためだけに鶏肉を仕入れるというこだわりのチキンカレーで、8種類のスパイスをベースに油控えめ、サラッとした味わい。オーナーがインド人から教わったという、インドのおふくろの味を再現する。1,200円。

フレンチ出身の金村一虎さんが厨房を仕切る。メニューが多国籍になるのも納得。

古民家の味わいを活かした和みの空間に。

焼肉ケニヤ

●三宿

夜風が吹き抜ける古民家でスパイス香る焼肉を。

 白金の〈酒肆ガランス〉といえば、知る人ぞ知る名酒場。機知に富んだ多国籍な味わいの料理もまた、ファンを引きつけてやまない。その2号店が三宿に生まれたのだが、なんと主力は焼肉だという。それでもガランスイズムは健在。コリアンスタイルの焼肉、ホルモンに加え、もう一つの目玉がスパイスを使った焼肉。鮮度抜群のホルモンを特製スパイスで和えたり、仔羊をチュニジアの香辛料で味つけしたりと、従来の焼肉とは一線を画す風味豊かな肉料理が、実に楽しく酒を呼ぶのだ。
 一品料理にはフムスにガスパチョ、〆のカレーや麻婆麺もあり、世界各国の多彩なつまみが焼肉に楽しい変化を与えてくれ、さらに酒が進む。
 オーナーが物件を見た瞬間、焼肉屋の構想が浮かんだという築50年超えの民家も情緒抜群。1階はスタンディング、2階は焼肉の構成で、地元住民がふらっと立ち寄れる雰囲気も、実に心地よい空気を生み出している。

お好みカレー2種がけ(レギュラー) 4種類を揃えるカレーの中からお好みで2種をチョイス。写真は右がラムキーマビンダルで、羊肉を使いビネガーとともに煮込むゴア地方のスタイル。左はチャナマサラというヒヨコ豆のカレーで、トマトをベースに肉を使わないにもかかわらずもったりと濃厚に。〆用のスモールサイズも用意。1,200円。

おまかせ前菜3種盛 上から時計回りに、スパイシーコールスロー、砂肝のピックル、貝のピックル。青唐辛子を効かせたコールスローは見た目とは裏腹に激辛。ピックルとはピクルスの単数で砂肝と貝を、異なる味つけでオイル漬けに。800円。

焼物・ミントチャトニ添え 右側から、オーストラリア産ラム200円、気仙沼産サメ200円、大山鶏250円。ラムはクミンやコリアンダー、サメはスパイスとレモン、大山鶏はガラムマサラを効かせるなど、それぞれ食材の長所を引き出すスパイス使い。

「できるだけ人と同じことはしたくない」 と菅原さん。

象などを描いたビビッドカラーの壁画が印象的な店内。一人客も多数。

Spice Bar コザブロ

●本駒込

大衆酒場と老舗カレーで磨いた腕を独自の味に。

 上野のガード下の大衆焼き鳥店〈文楽〉で3年。その後、一時は独立開業を考えるも、自分にはまだ武器が少ないと築地場内のカレーの老舗〈中栄〉へ。軽い気持ちでカレーのノウハウを覚えるつもりが、市場で働く人々の胃袋を支えてきたその精神に感銘を受け、気づけば10年。そんな菅原孝三郎さんがいよいよ生まれ育った本駒込で出店した。長く磨き続けた武器はもちろん焼き鳥とカレー。それぞれの店で得たスキルを存分に発揮するかと思えば、さにあらず。カレーは再度勉強し直したスパイス香る南インドスタイル。また鶏肉に加え、インドでポピュラーなサメやラムも使い香辛料を纏わせた串を完成させた。
「〈中栄〉で毎日食べていた飽きないカレーが究極の目標です」
とはいうが、インドやスリランカへ旅して自分なりの答えを探すあたり、かなりの気概が感じられる。スパイスつまみも充実の酒場に、早くも毎夜、下町の地元グルマンが集っている。

photo/
Keiko Nakajima
text/
大西健俊

本記事は雑誌BRUTUS850号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は850号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

No.850
建築を楽しむ教科書(2017.06.30発行)

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