テーマ〈続々・忖度〉

平常心ブラザーズの平常心を失くす日。

No. 848(2017.06.01発行)
死ぬまでにこの目で見たい西洋絵画100
やつい この間、ベトナムに行ったんですよ。ガイドの男の人が付いてくれて、その人、戦争を経験してて。
宮沢 その人、どのへんにいたの?
やつい ホーチミン。
宮沢 サイゴンか。
やつい 軍隊にいたんですっていう話になって。軽い感じだったから面白い話になるのかなって思っていたら、涙ながらの戦争の話になって、空気が重くなったっていうことがありました。馬鹿みたいにつついちゃいけないことなんですよね、戦争の話は。ベトナム戦争で一番困ったのは、蚊とか虫らしいんですよ。ベトナムはすごい薬をいっぱい開発していると。飲むと絶対に虫に刺されない薬を開発していたんですって。
宮沢 当時から?
やつい はい。ベトナムの薬、マジでやばいらしいです。アメリカ兵の蚊よけスプレーみたいなものは一切効かなかったから、ガンガン刺されて病気になっていったらしい。ベトナム兵が飲んでいたのは、アザラシの脂みたいなものから抽出した薬で、それを飲むと、あらゆる汗腺からアザラシ臭がするらしいです。アザラシって、蚊に刺されないらしいですよ。
宮沢 でも臭いじゃん。
やつい 3日間臭いとれないらしいです。でも、ずーっとジャングルにいても刺されない。その技術が今は市販されているらしいです。それから、お酒をいくら飲んでも、酔わない薬があるらしいです。それもベトナム戦争のときの技術。
宮沢 そうまでして、飲みたかったのか。わかんないなぁ、戦争してんのに(笑)。
やつい 女の子に何かをする以外で、その薬使うことあるんですかね? アメリカ兵と飲むシチュエーションなんかあるかな(笑)。そういうすごい薬を買って帰れるよっていう話から、最終的には「生きて帰ってきたが、僕はあそこで死んだんだ」みたいな話になって。だから、あの、言い方があれですけど、コントみたいでした。
宮沢 それ本当か。今まで真面目に聞いてきたけど、それほんとなのか?
やつい 適当に戦争をいじったらすごいの引き出しちゃって、黙らざるを得ない。コントに見えたけど、でも、そのガイドさんも途中で「あっ」と思って話を変えたから、あれも忖度だな。
(続く)

宮沢章夫/遊園地再生事業団主宰。『NHK ニッポン戦後サブカルチャー史 深掘り進化論』。

やついいちろう/エレキコミック。6月17日・18日『YATSUI FESTIVAL! 2017』開催決定。

photo/
村岡俊也
text/
村岡俊也
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村岡俊也

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No.848
死ぬまでにこの目で見たい西洋絵画100(2017.06.01発行)

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