音楽・ラジオ

逮捕事件までもポップ曲に昇華したジョージ・マイケル。

西寺郷太のポップ警察〜名曲・珍曲・捜査録〜

No. 840(2017.02.01発行)
みんなのZEN。
西城秀樹は「抱きしめてジルバ」。西城秀樹もカバーした「ケアレス・ウィスパー」や「ファザー・フィギュア」「フェイス」などヒット曲も入った2枚組。「アウトサイド」も入ってます。

『レディース・アンド・ジェントルマン...ザ・ベスト・オブ・ジョージ・マイケル』ジョージ・マイケル

昨年(2016年)は衝撃的な訃報が多い年でした。デヴィッド・ボウイ、モーリス・ホワイト、グレン・フライ、そして、たとえ80歳になってもピカソのように精力的に活動していると信じてやまなかった多作家プリンス……。マイケルジャクソンの「ロック・ウィズ・ユー」の作者で、尊敬するロッド・テンパートンの逝去もショックでした。そして12月25日。僕の最大のヒーロー、ジョージマイケルまでも……。しかし、これは昨年に限った特別なことではなく、我々が愛するロックやポップ・ミュージックの歴史が長い年月を重ねてきたことによる自然な結果なのだ、そんなふうに自分に言い聞かせています。ジョージマイケルは19歳の時(1982年)、ヒップホップは黒人だけのものと考えられた当時の常識を覆した「ワム・ラップ!」でデビュー。ビースティ・ボーイズやニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックより4年以上前に白人ラップをヒットさせていた先進性が、まず凄い。それだけでなく、2枚目のアルバム『メイク・イット・ビッグ』(84年)では、究極にアダルトなバラード「ケアレス・ウィスパー」を全米年間ナンバーワンの大ヒットに。ちょっと前までラップしてたのに……。ワム!は絶頂期に解散。ソロ転向後、デジタル・ファンク色の強い『フェイス』(87年)でグラミー賞最優秀アルバム賞を獲得。そして『リッスン・ウィズアウト・プレジュディス』(90年)では、「80年代的」なキャッチーで派手な音楽性を捨て去り、それ以降のシーンのトレンドを予見したオーガニックな作風で驚かせます。98年4月、ジョージロサンゼルス、ビバリーヒルズの公衆トイレ(いわゆる「ハッテン場」)で「わいせつ行為の現行犯」で逮捕。高級住宅のど真ん中にある公園のトイレ、ここを僕は数年前に「聖地巡礼」。異様にドキドキしました。ジョージの凄さは、カミングアウトし、復帰作のシングル「アウトサイド」の歌詞やビデオで、事件を逆手に取ったポジティブでユーモラスな切り返しを行ったこと。警察のコスチュームに身を包み踊るジョージこそ、まさに「ポップ警察」。ちゃんと会って、感謝の気持ちを伝えたかった。

にしでら・ごうた

2014年に上梓した『噂のメロディ・メイカー』はワム!への愛が詰まったノンフィクション風小説です。この機会にぜひ。

edit/
辛島いづみ

本記事は雑誌BRUTUS840号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は840号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

No.840
みんなのZEN。(2017.02.01発行)

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