エンターテインメント

子供の発する言葉から見出した、演劇のようでいて演劇ではないもの。

BRUTUSCOPE

No. 839(2017.01.13発行)
日本一の「お取り寄せ」グランプリ。

子供たちと行ったワークショップをもとに、「ことば好き」の岩井秀人、「からだ好き」の森山未來、「うた好き」の前野健太によって作り上げる舞台『なむはむだはむ』。実は、本人たちでさえまだその行く末をつかんでいないという。子供の持つ不条理なセンスに、大人たちはどう対峙したのか。岩井秀人と森山未來の会話から、その糸口を探った。

岩井秀人 
そもそもは野田秀樹さんが東京芸術劇場の芸術監督になった時に、子供が書いた台本を大人が寄ってたかって演劇にするっていうのをやりたいと言っていて。「いつやるんですか」って聞いたら忙しくてやれないと。じゃあ、僕がやってもいいですかという流れで。それで、未來君に声をかけたんだよね。
森山未來 
僕がイスラエルから帰ってきたばかりの頃ですね。その時に向こうのダンスカンパニーは、レパートリーとしてチルドレンショーを持っているって話をして。尺を調整したりはしても、彼らの世界観をそのまま子供に開く感じがすごくよかった、と。でも、後日メッセージがきた時、その話をしたのは覚えているんだけど「やろうよ」と言ったところまでは覚えてなくて……。
岩井
いま、その責任をとっている最中だ(笑)。でも、それを聞いた時に『コドモ発射プロジェクト』に印象が近いと思って。僕も最初は、子供がめちゃくちゃなものを書いて大人が演劇にするだけで面白そうだなと思っていたけど、自分の庭じゃないところに引っ張ってもらいたいというのがあったんだと思う。
森山 
作品を構築しようとしている岩井さんを端からほどいていく感じ。
岩井 
ワークショップでも「せっかく登場した人をすぐ殺すなよ」って言ったんだけど、死ぬって子供にとってはすごく面白いことだし、僕だって面白かった。そういうのを知恵がついて、だんだん避けるようになってきている部分があったからね。
森山 
チラシの裏に書いている、「『なむはむだはむ』の由来はワークショップ中に子供たちが生み出した死者を弔うための言葉です」って、これがすべてを表している。無邪気さと不条理さを楽しんじゃう子供のセンスを僕らで面白おかしく解釈していくってことですよね。
岩井 
ただ、どういうものになるのか、現状でわかっていないというね。まあ、そこに価値があるんだけど。今のところイメージできているのは、子供たちから話を引き出すのがどのくらい困難だったかを見せつつ、ここまで研究しましたっていう発表になりそうだね。
森山 
TEDみたいな。
岩井 
一人でスライド見せながら、「非常に厳しい時間でした」とかね。物語が生まれるんだけど育ちきらなくて、おかしくなっていく。それを観客と一緒に見ていくってことかな。子供たちは、話している横で何か言われたらすぐその言葉を使っちゃうしね。
森山 
さっきも「汚い手で触るな」って言われたんですよ。それは状況に対してではなく、知っているフレーズを言いたくなっただけで。
岩井 
子供の意思ではなく、別のところで聞いたものの集積で未來くんが傷つけられていくんだ。
森山 
だから彼らが物語を書いても、童話やおとぎ話からの寄せ集めでしかなかったりするんですよね。
岩井 
じゃあ、言葉の意味は全部無視しよう。最初に子供からもらったって言っておけば、どんな下ネタを言っても許されるはず。
森山 
前にバスの中で親子の会話を聞いていた時、「あの人はお仕事何しているの?」って誰かの仕事を子供が知りたがっていたんですね。お母さんは「お酒を作ったり、お話したり」って濁そうとするんだけど、最終的に「それ、水商売ってこと?」って子供が言っちゃって。その危うさが『コドモ発射プロジェクト』にもつながる感じがします。
岩井 
「水商売」も「死ぬ」っていう言葉も、彼らにとってはほかの言葉と同じ。その言葉にまとわりついているしがらみとか無視して、ただ面白がっていたりする。だからどれくらい子供のせいにできるかだね。子供側というか、そもそも言葉の音とか響きを優先した方がいいかも。
森山 
そこは、前野健太にお任せしましょう。そもそも前野健太を岩井さんに推薦したのも、僕ら2人の間を横断する人がいた方がいいというイメージを持っていたからなんです。彼はミュージシャンという肩書での存在の仕方だけではなく、ただいるだけで面白いし、存在感が強い。
岩井 
でも「つくるひと」ってクレジットしちゃったから、3人が出るっていうイメージがあまり世間に浸透してないらしいよ。
森山 
ヤバい 子供が出るイメージの人が多いのかな。
岩井 
これはこれで間違ってはいないんだけどね。より正確には「つくってでるひと」っていうことだね。
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森山未來

もりやま・みらい/1984年兵庫県生まれ。数々の舞台・映画・ドラマに出演する一方、文化庁文化交流使として2013年秋より1年間イスラエルに滞在、インバル・ピント&アヴシャロム・ポラック ダンスカンパニーを拠点に活動。

岩井秀人

いわい・ひでと/1974年東京都生まれ。家族、引きこもり、集団と個人、個人の自意識の渦、等々についての描写を続けている劇団ハイバイを主宰。代表作『ヒッキー・カンクーントルネード』『て』『ある女』『おとこたち』がある。

『コドモ発射プロジェクト
「なむはむだはむ」』

原案:こどもたち/つくってでる人:岩井秀人、森山未來、前野健太/そもそもこんな企画どうだろうと思った人
野田秀樹/予測不能な子供のひらめきをもとに、大人たちが右往左往しながら演劇作品に仕上げるプロジェクト。2月18日〜3月12日東京芸術劇場シアターウエスト。●問合せ/東京芸術劇場ボックスオフィス☎0570・010・2
96。http://hi-bye.net/namuhamudahamu/

photo/
Tomoo Ogawa
text/
Satoru Kanai

本記事は雑誌BRUTUS839号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は839号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.839
日本一の「お取り寄せ」グランプリ。(2017.01.13発行)

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