映画

カンヌを震撼させた衝撃作を携え、時代を先駆ける奇才が来日。

BRUTUSCOPE

No. 839(2017.01.13発行)
日本一の「お取り寄せ」グランプリ。

2011年、『ドライヴ』でカンヌ国際映画祭監督賞を受賞したニコラス・ウィンディング・レフン監督の新作『ネオン・デーモン』は、昨年のカンヌ映画祭で激しい賛否を巻き起こした衝撃作。“レフン監督が最も親しい日本クリエイター小島秀夫とともに、世界を騒然とさせたそんな新作の根本にある、彼の飽くなき創造性を探る。

小島秀夫 レフン監督の『ヴァルハラ・ライジング』が10年にアメリカで公開された時、ハリウッドの友人からメールが来たんです。「すごい映画を観たぞ」って。すぐに輸入盤のブルーレイを観て、これは大好物だと思いました(笑)。『ドライヴ』が日本公開された後、配給会社から監督の連絡先を聞いて、ロンドンで会ったのが最初でしたね。
ニコラス・ウィンディング・レフン その時、いろいろな話をして、2人にはたくさんの共通点があることに気づきました。例えば、メガネをしていることとか(笑)。
小島 違う国に生まれて、違う育ち方をしているけど、吸収してきた文化が一緒なんです。僕はそれを消化してゲームにしている。一方で監督は映画にしている。それだけの違いなんですね。だから初めて会ったのに、古い友達みたいな気がして(笑)。監督には、僕がいかにお金儲けが下手かってよく怒られてますけど。
レフン ははは。でも僕らは理想主義的な考え方の持ち主かもしれませんね。お金や栄誉、虚栄心より先に、クリエイティビティの快楽を見出しているから。
小島 レフン監督の映画を観て、好きだなと思うのは、作品を通して監督の表情や思想が見えるところです。色彩や音楽、言葉で説明しないところなど、その世界観はほかの監督には絶対真似できない。
レフン 25歳の時、最初の長編映画を撮り終えた後、エリア・カザンに会ったんです。彼に「若い監督に何かアドバイスを」とお願いしたらただ一言、「Do It Your Way」と言ったんですね。え、それだけと思ったけど(笑)、今は彼が本質的なことを語っていたんだとわかります。僕たちはやりたいことをするしかないし、するべきだと思う。
小島 『ネオン・デーモン』はまさにそういう映画ですね。観る人は覚悟しておけよと(笑)。監督には既にたくさんのファンがいますが、みんなが期待する通りのものを作っていても仕方ない。時には裏切る必要もあるんです。全員が面白いと言うものは実は面白くありませんからね。賛否両論が一番いい。
レフン 大切なのは、理解できる作品かどうかではなく、忘れられない作品であることなんです。エンターテインメント業界はマネタイズの方程式を完璧に作り上げていった結果、逆に失墜してしまった。特にインターネットが普及して以降、人々はそのような方程式で作られたものに、お金を払おうとしなくなったんです。だからまず創造しなければならない。
小島 新しさを提供することが大事だと思います。ただゲームはインタラクティブなものだから、いかに新しくても、四角いタイヤの車を作ることはできません。アートならそれでいいんです。僕がゲームによって作り出したいのはこれまでにない感情を引き寄せるもの。
レフン 僕の場合、四角だと思って作り始めたら、最終的に三角だったみたいなものが好きだけど(笑)。僕らが向かっているのは、大量のコンテンツが渦巻く世界です。その中でどうやって生き残っていくかといえば、唯一無二の作品を生み出すしかありません。そのためには誇大妄想狂にならなければならないし、自己陶酔できなければならないし、傲岸不遜でいなければならない。そうでないともの作りなんてできません。

『ネオン・デーモン』

監督:ニコラス・ウィンディング・レフン/出演:エル・ファニング、キアヌ・リーヴス/モデルを夢見て、田舎町からロスへやってきた16歳の少女、ジェシーはその美貌でファッション業界を駆け上がる。だが、周囲の彼女に対する羨望や嫉妬は、やがて惨劇を招き……。ビビッドな映像と無機質なサウンドトラックによって、現代の悪夢をスタイリッシュに描き出すレフン監督最新作。少女の艶やかな肌を鮮血が! 1月13日、TOHOシネマズ六本木ヒルズほかで全国公開。
©2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch

photo/
Satoshi Chiba
text/
Yusuke Monma

本記事は雑誌BRUTUS839号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は839号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.839
日本一の「お取り寄せ」グランプリ。(2017.01.13発行)

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