エンターテインメント

『イリヤの空、UFOの夏』|秋山瑞人/著

私の価値観を180度変えた一冊。

No. 838(2016.12.15発行)
危険な読書
夏休みの間、ゲリラ新聞部に所属する中学2年の浅羽直之は裏山でUFOを探す日々を送る。2学期の始業式、伊里野加奈という不思議な少女が転校してきた。電撃文庫。

王道のSF青春ラブストーリーにハマる。

落合陽一/メディアアーティスト

 ゼロ年代セカイ系の代表格。中学生だった僕は中2病真っ最中で、いろいろなものに影響されやすい年頃だったこともあってか、哲学書を読んだり、小説や詩集を買ったり、好きな音楽を聴いてはジェットコースターのような精神のアップダウンを繰り返していた。その中でもこの中毒性の高いSFは特に大きな影響を僕に与えている。筋書きはといえば、笹本祐一の『妖精作戦』をオマージュしたスタンダードなボーイミーツガールなのであるが、特筆すべきは天才・秋山瑞人の自由な文体が人称を超えて語りかけてくる圧倒的な筆力にある。ラノベと侮るなかれ、その地の文の表現力の高さは文春や新聞の書評欄でも高く評価されたほどだ。星空がよく見える季節になった今、終わってしまったひと夏の冒険を思い返し、UFOを探しに空を眺めてみたくなる。寝食を忘れた探求への憧れは僕の人生に大きな爪痕を残している。

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photo/
Shinichiro Fujita
text/
Yuriko Kobayashi, Toshiya Muraoka, Keisuke Kagiwada, Toko Suzuki, Hirokuni Kanki, Kosuke Ide
edit/
Keiko Kamijo

本記事は雑誌BRUTUS838号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は838号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.838
危険な読書(2016.12.15発行)

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