エンターテインメント

『ガリヴァー旅行記』|ジョナサン・スウィフト/著 平井正穂/訳

私の価値観を180度変えた一冊。

No. 838(2016.12.15発行)
危険な読書
もともとは、大人向けに書かれた風刺文学で、当時の英国の政治、社会、宗教などを辛辣に批判した寓話シリーズ。小人国、大人国、飛ぶ島などで構成。岩波文庫。

価値観を一転させられた本。

深田晃司/映画監督

 13歳の大晦日、リビングでは家族が紅白歌合戦を観戦するなか、自室でひとりスウィフトの『ガリヴァー旅行記』を読み終えたときの異常な昂奮は忘れられない。平凡でボンクラな日常に爆弾を投げ込まれたかのような衝撃だった。広く膾炙される『ガリヴァー旅行記』は、全四章のうち第一章と二章が児童向けにデフォルメされたものだ。確かに小人国、巨人国でのガリヴァーの冒険は良質な童話のような佇まいがあるが、実際は当時のイギリス社会への痛烈な風刺となっている。それが第三章になると、アカデミズムへの風刺となり、最終章では知性を持った馬と醜い人間そっくりの家畜の対比を通し、人間の存在そのものへの吐気を伴うような疑念へと深化する。ぜひ我らがガリヴァーの、旅の果てに辿り着いた悲痛な姿を目撃して欲しい。著者スウィフトの姿を描く富岡多惠子の傑作『ひべるにあ島紀行』も併せてお勧め

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photo/
Shinichiro Fujita
text/
Yuriko Kobayashi, Toshiya Muraoka, Keisuke Kagiwada, Toko Suzuki, Hirokuni Kanki, Kosuke Ide
edit/
Keiko Kamijo

本記事は雑誌BRUTUS838号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は838号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.838
危険な読書(2016.12.15発行)

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