アート

雑誌・広告などで活躍。20歳の時、第18回写真ひとつぼ展グランプリを最年少で受賞。写真集に『ビルに泳ぐ』など。

私の中の星野道夫、10人のストーリー。

No. 830(2016.08.16発行)
こんにちは、星野道夫。

 19歳の星野さんが何度もめくっていたアラスカ写真集。その中に特に好きな写真がありました。シシュマレフという小さな村の空撮写真。ベーリング海と北極海がぶつかる海域にある島でした。その村を訪ねたいと思った星野さん。住所も何もわからないまま、「シシュマレフ村 村長へ」とだけ宛名を書いた手紙を投函します。
「何でもするからどこかの家においてほしい」と。その半年後、「歓迎します」との返事が届きます。これが、その後続く、星野さんとアラスカの物語の始まり。
 メールも携帯電話もない、今とは海外へ行く事情も違うのに、なんていう真っすぐな「行動力」。そこに惹かれて、何冊もエッセイを読むようになりました。
 私の10代はというと、親の反対を押し切り、デザイン科のある高校に入学。そこで写真に出会い、この道で生きていくと決めた頃。撮った写真を自己満足で終わらせないためにどうしたらいいか、思いついたのが写真を売ること。放課後、表参道の同潤会アパート前で露店を出して。交番から注意を受けたりもしたけれど、そこで出会った年齢もバックグラウンドも違う仲間たちが学校とは違った世界を広げてくれたように思います。
 次の転機は30歳。NYへの留学。仕事が充実していた時に日本を離れるのは不安でしたが、英語が話せればさらに写真表現の幅が広がると思い、決心しました。今、振り返ると私にもささやかながら行動力があったんだなあ(笑)。
 年を重ねると、えいと飛び込む勇気が薄れていくけれど、星野さんの本を読み返すとあの時の気持ちが蘇ってきて、行動する力を忘れるなよ、と教えてくれるのです。

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田尾沙織

写真家

雑誌・広告などで活躍。20歳の時、第18回写真ひとつぼ展グランプリを最年少で受賞。写真集に『ビルに泳ぐ』など。

photo/
Yuriko Kobayash
text/
Keiko Kamijo, Hikari Torisawa, Tsumugi Takahashi
illustration/
Amigo Koike

本記事は雑誌BRUTUS830号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は830号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.830
こんにちは、星野道夫。(2016.08.16発行)

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