エンターテインメント

アイドル歌謡効いて下半身もるんるんに。

滝本誠のCAFÉ NOIR

No. 817(2016.02.01発行)
漫画ブルータス

 シングル盤A面が「春はSA・RA SA・RA」、B面が「夢の色」、A面が初恋、B面が失恋テーマ。これが今年春期のテーマ曲となりました。どうしても欲しくなり、ショップをめぐって、ようやく買い求めた古いアイドル歌謡(1984年発売)の一枚。
 これを聴くと、つい体が動いてしまいます。腰にエネルギーが注入されるのですね。奇跡といっていいでしょう。少女の髪の香りも感じ、生き返る想いがするのがわれながら不思議です。昔のアイドル歌謡に今はまり、歌声に心身が再生させられるとは
 歌っているのは、これがデビュー・シングルとなった長山洋子さん。TVをあまり見ない生活だったこともあり、まるで聴いたことがなかった曲です。本来、演歌でデビューしたかったらしいのですが、10代ということもあって、とりあえずアイドル路線で売られ、やがて演歌歌手へと転身されたようなのです。ともかく、老いぼれが、らんらんるんるん浮き足だって踊らんばかりになっている様は、見ようによっては十分不気味でありましょう。
 すべては一本の映画、スペイン人監督カルロス・ベルムト監督のデビュー作『マジカルガール』を見たことで始まりました。この映画は驚きというしかありません。不意打ち連打にしてハートわしづかみの、ビターかつ、ひねりのきいた変態ノワールなのでした。詳しくはいえませんが、こんなストーリーなかなかひねり出せません。
 冒頭、一人のコスプレ美少女が、日本語の歌にあわせて踊り、踊り、そして倒れるのですが、このときに流れるのが、長山さんの「春はSA・RA SA・RA」なのです。しかも、セーラームーン・タイプのアニメ・ワールドをこのスペイン人監督は、自分で創造してしまっています。オタクはインターナショナル。12歳の少女からマコトという言葉を聞く日がこようとは……。ウーン、エクスタ。
 娘のために、高価な一点もののコスプレ衣裳を購入するために、シングル・ファーザーの父親がとった行動がスペインの闇を引きよせます。

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たきもと・まこと/東京藝術大学卒業後、編集者に。近著に『映画の乳首、絵画の腓 AC 2017』(幻戯書房)。

本記事は雑誌BRUTUS817号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は817号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.817
漫画ブルータス(2016.02.01発行)

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