小さな地方商店街で祖父の代から続く和菓子屋を営んでいますが、後継者がいません。老舗といっても街の和菓子屋なので、それほど継いで残すべき店でないのかもしれませんが、長年住み愛している商店街が年々、閑散としていくのを見るのも寂しいものです。どうにかみなさまのお知恵を拝借したいです。(和菓子屋店主/72歳/男)
箭内
それは寂しいですよね。でも、和菓子を作ることができる場だけでも残されているのは、和菓子職人になりたい者にとっては絶好の機会。後を継ぎたい人、必ずどこかにいるはずです。一般募集をしてみてはどうでしょう。和菓子職人と花火職人は、モノを作る人間が一度は憧れる、人をアートの力で幸せにできる二大幸せ仕事です。僕もなりたかった時期がありました。一方で、ウチの実家も地方の小さなお菓子屋で、僕が継がなかったせいで店は潰れました。僕の父もあなたと同じ悩みを持っていたのかもしれませんね……。
エリイ
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。と、頭の中で『平家物語』の一節がリフレインするご相談ですね! やはり、ヤル気のあるあなた様が行動を起こさねばなりません。できることは何でもするのです。人民はテレビに弱いですから、老舗の和菓子屋と銘打って取材に来てもらえるように片っ端から連絡したり、大きなデパートに出店したり。何をやっても、まあすべてはただ春の夜の夢のごとしなんですよ。まず自身の声を聞き心がワクワクすることを行動してみる。人生はひとえに風の前の塵! 死ぬ前に盛者必衰!
大根
近所の本屋に「長年ご愛顧いただきましたが、時流には逆らえず、やむなく閉店することになりました。老兵は去るのみです」とありました。「へえ、そうなんだ」とともに「老兵のくだりはいらねえんじゃねえか」と思いました。本屋だけにヘミングウェイの言葉を引用したのかと気づきましたが「老兵は死なず、ただ消え去るのみ」はダグラス・マッカーサーの引退演説でした。でもこれもマッカーサーオリジナルではなく、米兵士の間で流行っいた風刺歌のパクリだそうです。本屋さんのチョイスは間違ってなかったんですね。
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- edit/
- 大池明日香
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- sigo_kun
本記事は雑誌BRUTUS817号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は817号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。