映画

視覚効果

No. 814(2015.12.01発行)
今日も映画好き。
中島、森によるエンドロールは、ジャンプコミックスを模した単行本の背表紙に、スタッフの役職と名前を織り込んだもの。斬新! パロディロゴを手がけたのはヨシマルシン。Ⓒ2015映画「バクマン。」製作委員会
主人公がマンガを描く仕事部屋に、描き上がった原稿のイメージがプロジェクションマッピングで浮かび上がっていく。上田は舞台の劇中映像などで同様の手法を用いてきた。Ⓒ2015映画「バクマン。」製作委員会
ミュージックビデオ世代の視覚効果とは?
映画『バクマン。』は、コミックをモチーフにしたエンドロールや、実際の風景に映像を投射するプロジェクションマッピングなど、かつてない視覚効果で注目を集めた。制作を担ったeasebackの中島賢二と森諭、&FICTION!の上田大樹に聞く、ハリウッドと異なる進化を遂げた視覚効果。
中島賢二 僕と森は、『バクマン。』にVFXとしてクレジットされてますけど、前提としてVFXが専門ではないんです。
上田大樹 僕もそうですね。もともと自主映画を撮っていて、その後テレビや舞台の映像の仕事をしていたら、次第にタイトルバックなどの依頼が増えてきた。VFXではなく、モーショングラフィックスと呼ばれるものから入ってるんです。
森諭 視覚表現の一つの方法としてVFXを使ってたら、そこから広がっていった感じですよね。僕らが最初に映画に関わったのは『モテキ』の時。ドラマ版で大根(仁)監督から主題歌のミュージックビデオを作ろうと声をかけていただいて、その流れで映画版のエンドロールの依頼をいただいたんです。
中島 いつもオーダーがアバウトで、微笑みながら「何か考えてよ」と言われます(笑)。『バクマン。』も台本のト書きに、「映画史上誰も観たことのないエンドロール」と書いてあって。
森 僕らや上田さんに投げれば、変なものが返ってくるという大根さんの思いがありそうだよね。
上田 『バクマン。』で僕がプロジェクションマッピングを担当したシーンも、ト書きで何行か書いてあるところを膨らませていったんです。以前、『テヅカTeZukA』という舞台でマンガをプロジェクションマッピングしたことがあったので、それに近いのかなって。
中島 ほかの映画では観たことがないですよね。僕の認識だと、プロジェクションマッピングはライブ感を出すためのもの。
上田 生で観る時はいいけど、映像作品で成立させるのってなかなか難しいですよね。だからプロジェクションマッピングをあまり意識せず、普通にカッコいいものとして成立させておこうって。エンドロールもよくあれができましたね。映画はわりと保守的なところがあるから。
森 確かにいろいろ言われながら、説得したり脅したりして(笑)。最初はどれか選んでもらおうと思って、アイデアをいくつか持っていったら、全部ありになっちゃったんです。
中島 だからエンドロールだけで5部構成になってるんですね(笑)。ここまでやる必要があるのかなと思いつつ、でも全部やりたいしなって。
森 作業場のセットから、スムーズにパロディロゴのコミックへ移行していくところは、DJのロングミックスで、気がついたら曲が変わってたみたいなイメージがありましたね。
感覚的な気持ち良さを視覚効果で表現したい。
上田 映像の仕事を始めた頃は、ソウル・バスとかカイル・クーパーとか、モーショングラフィックス的なタイトルデザイナーの影響が強かったです。本編は観ずに、タイトルバックだけ何本もまとめて観たりして。グラフィックものはアイデア次第で少人数でも勝負できるかなと。
中島 Macを買って、小さいチームで映像が作れるようになってきた時代ですよね。『ジュラシック・パーク』でリアルなコンピューターグラフィックスが登場して、それを表現に昇華した、面白い作品が次々に生まれていった。10代終わりから20代初めは、ミュージックビデオやスケートビデオを海外から大量に買ってきてましたね。
上田 CGでいろんなことができるようになって、観たことのない自由な表現がたくさん出てきた時期ですよね。
森 僕らはミュージックビデオ世代なので、長い尺で物語を描くことより、3、4分で起承転結を作るとか、一ネタで沸かせるとか、そっちの方が好きでした。
上田 スパイク・ジョーンズやミシェル・ゴンドリーあたりはみんな好きでしたよね。ゴンドリーが監督した『エターナル・サンシャイン』は、コマ撮りと実写を混ぜたオーガニックな仕上がりで、いかにもCGな感じがなくて良かったです。
中島 ほかにもマーク・ロマネクやクリス・カニンガム、ジョナサン・グレイザーたちの影響は絶大ですよね。彼らが関わったスミノフやギャップのCMは、視覚効果に力を入れたケレン味のあるもので、そういった映像に影響を受けたと思います。
森 あとタケイグッドマンさんとか。ミュージックビデオやCMの人たちは、VFXを絡めてグルーヴ感を生み出すことに敏感で、みんなそこを突き詰めていった気がします。映画だと、『JUNO』のジェイソン・ライトマンは、VFXやグラフィックの使い方がいいですね。音楽との親和性が高くて。
上田 僕らの世代は、使い方のセンスで勝負してるようなところがありますよね。
森 決して技術がどうこうというところで勝負していない。
中島 技術を突き詰めても終わりがないので、もっと伝わる部分を大事にしようって。感覚的な気持ち良さを、視覚効果を使って映像で表現するのが、僕らの世代の特色かもしれませんね。

中島賢二/森 諭
映像の企画・制作、広告などを手がけるクリエイティブチーム〈easeback〉の映像ディレクター。コマーシャルやミュージックビデオが国内のみならず海外でも高い評価を受ける。

上田大樹
テレビや映画のタイトルバック、舞台の劇中映像を手がける〈&FICTION!〉の映像ディレクター。2003年の第25回ぴあフィルムフェスティバルで監督作がグランプリを受賞している。

text/
Yusuke Monma

本記事は雑誌BRUTUS814号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は814号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

No.814
今日も映画好き。(2015.12.01発行)

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