ゆう/Kinoe

グルマン温故知新

No. 797(2015.03.16発行)
あなたにふさわしいモード。

和でも洋でも。季節を感じる料理を野菜と魚で。

巷の飲食店を肉ブームが席捲する中、「魚と野菜で勝負するぞ」と狼煙を上げてオープンした和食店とフレンチベースのレストラン。メニューにも、皿の上にも旬の食材が躍り、繊細な味つけに食後感も爽やか。日に日に暖かくなるこの季節。胃袋で春を迎えに!

旨い野菜の出汁よせ ビタミンダイコン、もみじスティック、黒ダイコン、ラディッシュ、グリーンアスパラガス、チーマ・ディ・ラーパなど季節の野菜が10種以上。それぞれ下ゆでしてだしを含ませ、だし醤油の餡をかけて仕上げる。下ゆでで火を通しすぎず辛味や苦味がわずかに残る塩梅で。餡を絡めることで、酒が進む味になる。

本日のお刺身 写真左から、ブリにはポン酢と辛味ダイコンのジュレと葉タマネギ、クロダイには泡醤油、ヒラメにはだしのゼリーと刻み昆布、アオリイカには柚子塩の泡をのせて。ルックスに華があり、味わいにも発見がある。

旬のものを豆皿で 写真左上から時計回りに、キンカンのスープ、紫キャベツとアスパラガスのマリネ、セリフォン(中国辛子菜)のおひたしと大浦ゴボウのカツオ節粉和え、セリの餡をかけた茶碗蒸し。すべてコース3,800円の一皿。

週末は欠かさずファーマーズマーケットに出かけるという井本さん。

井本さんの手元が見えるカウンターから予約が埋まる。

ゆう

代々木上原

一手間が利いた“飲める”魚、野菜料理。

 コースなら2皿目に、アラカルトならお通しとして供される「旬のものを豆皿で」。4品の料理は基本、野菜(ときどき果物)だけで作られる。柑橘の酸をほのかに利かせたマリネ、だしが香るおひたしや茶碗蒸し。ああ、ほっとする。そしてつい酒がくいくいと進んでしまう。
 イタリアンから料理の道に入り、カウンターでお客と向き合う魅力に惹かれ和食に転向した店主の井本有祐さん。〈銀座KAN〉などで修業し、昨年開いた和食店では、自分が好きな野菜と魚を柱に据えた。品書きには焼き物にも酒肴にも野菜料理がずらり。魚は愛媛県長崎県の漁師や業者から。泡醤油やだしのゼリーを添えた刺身は、修業先のリストランテのカルパッチョがヒントというが、ワサビ醤油オンリーより酒と合わせる楽しみが広がる。野菜のだしよせも、餡で旨味を纏わせ酒に寄り添う味に。日本酒も味に惚れ込んだ島根県の「王禄」一本。好きなものばかり。だから伝わる。

鮮魚のカルパッチョ 彩り野菜と 魚は3種、野菜は10種以上。マハタは塩とレモンでマリネし、わずかな量の一味を振って。サワラは軽く塩をして水分をしっかりと抜いて旨味を凝縮させ、サバはディルとレモン汁で締めて。丁寧な仕事に魚の持ち味が浮かび上がる。見た目はまるでサラダなカルパッチョ。きりっと軽やかな白ワインとぜひ。

桜鯛の桜蒸し 塩漬けにした桜の葉でマリネした桜鯛を蒸して、桜の葉の塩漬けと三陸産の新ワカメを添えて。春の訪れを知らせる淡い、桜餅のような香り。ふんわりとした身がハマグリだしの旨味と新鮮なオリーブオイルの香りを纏う。

香ばしく焼いた鰻と里芋のテリーヌ 鰻と鰻のだしで炊いた里芋を重ね、ツメを塗って焼き上げた一皿。鰻はほろり、里芋はねっとり。甘味と深みのある黒キャベツの芽と、クリーミーでコクのある白ワインソースと一緒に。すべてディナーコース8,500円より。

夏目さんの目の前に、シェフズテーブルのようなカウンターあり。

テーブルにはクロスを張り、ソムリエがサービスにあたる。

Kinoe

●恵比寿

付け合わせにも野菜満載の皿をコースで。

 フレンチをベースにジャンルの枠にとらわれない料理で人気を博す恵比寿〈リコスキッチン〉で15年料理長を務めた夏目治樹さんが独立。山手線の線路を越えた駅の反対側、昨年建った真新しいビルの4階に自身の店を開いた。店名は「季の恵」から。
 ここでも“夏目料理”のスタイルはそのまま。席数が少なくなった分、これまで以上に食材を吟味し、魚と野菜によりフォーカスすることで名の通り季節感を前面に。桜の花びらの塩漬けを使った「桜鯛の桜蒸し」やサラダかと思うほど野菜山盛りな「鮮魚のカルパッチョ」といった軽やかな皿は、香りや酸の利かせ方が印象的。ツメを塗って焼いた「鰻と里芋のテリーヌ」など濃厚な料理には、火を入れて甘味を引き出した香りの強い野菜を添えるなど、素材の組み合わせにも練り上げられた安定感を感じる。アラカルト並みにしっかりポーションの料理6皿のコースが6,800円。ちゃんとお腹を空かせて行かないと。

カテゴリの記事をもっと読む

ゆう

代々木上原
03・6804・8997
17時~24時LO。
日本酒は「王禄」のみ16種800円~(150㎖)。日本ワインあり。
定番のおまかせ3,800円と旬のおまかせ4,000円。アラカルトあり。
2卓8席、カウンター10席。

東京都渋谷区西原3−22−12。月曜休。交通:東京メトロ代々木上原駅東口から徒歩3分。井本さんはイタリア料理の名店〈リストランテ濱㟢〉の厨房で4年、〈銀座KAN〉で5年修業。独立前に1年半勤めた神泉〈ぽつらぽつら〉で「王禄」
に出会う。チーマ・ディ・ラーパやパンツェッタなどを使ったイタリアンテイストな料理にも注目。コースがお得だが、「アラカルトでもお気軽に」とのこと。

Kinoe

●恵比寿
03・6338・3089
12時~14時30分LO(平日は要予約)。17時30分~22時LO。
ワインはフランスが中心。グラス1,000円~、ボトル5,200円~。
ランチ2,800円、ディナー6,800円と8,500円。夜はアラカルトあり。
7卓14席。カウンター4席、個室6席。

東京都渋谷区恵比寿南1−18−9 Time Zoneヒルトップビル4F。不定休。交通:JR東京メトロ恵比寿駅西口を出て、線路沿いの道を目黒方面に約4分。テーブルには箸もセット。アラカルトはシェアもOKで、1人客のハーフポーションにも快く対応してくれる。8,500円のディナーコースは、食べる速さや量に合わせ即興も盛り込む10皿前後。ワインおまかせ3種2,800円~。サ10%別。

photo/
Yuji Kanno
text/
佐々木ケイ

本記事は雑誌BRUTUS797号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は797号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.797
あなたにふさわしいモード。(2015.03.16発行)

関連記事