生活・スポーツ

命懸けの自転車。

生島淳の僕しか知らないアスリートの秘密

No. 796(2015.03.02発行)
ロンドンで見る、買う、食べる101のこと。

 昨年の秋、愛車ブロンプトンを新幹線に積んで京都に自転車旅行としゃれ込んだ。折り畳みなので行動範囲は自由自在、朝食には大好きなパン屋さんに行き、夜も居酒屋には自転車で乗りつけた。町のほとんどが行動範囲、世界最高の自転車で遊べる町は京都じゃないかと思ったほどだ。
 さて、このブロンプトン、実はロンドンで買ったもの。それも、オリンピックの時に。自転車愛好家のロンドン市長の肝煎りもあって、専用道やレンタサイクルなどのインフラ整備が進んでいるから、「俺もここで乗りたいな」と思い立ち、衝動買いしてしまったのである。円高だったし、なんだか五輪の思い出に……ってなもんだ。愛車を駆って、ベーカー街221Bやら、レスター・スクエアのエスニック街に行って、もう気分はロンドンっ子である。
 ただ、自転車の外出には「覚悟」が必要だった。なぜかって、絶対に車道を走らなければいけないからだ。これが、おっかない。直進したいのだが、左折レーンが出てくると真ん中に寄らないといけない。ある時なんぞ、前後をバスに挟まれた。あの、2階建てバスだ! 異様な圧迫感。なんだか命懸けの自転車外出になってしまい、「俺は日本に帰れるのか?」と涙が出てくる始末。でも、いい勉強になった。ヨーロッパじゃ、自転車はあくまで車の一部だということ。歩道を走るのには無理があるのだよ、日本の諸君。

いくしま・じゅん/スポーツジャーナリスト。著書に『箱根駅伝コトバ学』など多数。

illustration/
土車大八

本記事は雑誌BRUTUS796号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は796号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

No.796
ロンドンで見る、買う、食べる101のこと。(2015.03.02発行)

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